ずっと、隣にいたいだけ

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「千幸、千幸、俺の千幸。……上に部屋とってる。一緒に来てくれるよね?」 「うん。一緒にいたい」  一緒にいれるなら、家に帰ってもホテルでもどこでもいい。千幸のためにとってくれたというのなら、そこがいい。 「ああー、今日めっちゃ素直。可愛い。千幸、ちょっと酔ってるね? ほんと、これ以上はさすがにここでは無理だ。ちょっときつい。嬉しいのに苦しい。ああ、なんで部屋じゃなくてこんなところで可愛いこというの?」  ずいぶん勝手なことを言ってくる。毎日、毎日、臆面もなく愛を囁く恋人に言われたくない。 「だって、翔さんがどうしたいなんて言うから。ちゃんと伝えたいって思って。祝ってもらってすごく嬉しかったし、ずっと一緒にいたいと思ったし」 「ああー、もうっ。ごめん。聞いた俺が悪い。千幸はちょっと酔ってるな。ああー、まじか。可愛すぎなんだけど」 「酔ってるけど酔ってない。意識はちゃんとしてるから」  千幸が告げた言葉を軽く考えないでほしい。多少はお酒の勢いで照れが減った部分はあるが、本当の気持ちなのだから言ったからにはそのまま伝わってくれないと困る。  むっとして睨むと、ぽんぽんとあやすように頭を叩かれた。そして、はぁーと熱い吐息を吐き出す。 「ああ、ほんと千幸、千幸ちゃん、俺のために黙って。これ以上はここではもうダメだ。千幸にその手のことは言ってほしいけど、いざ言われたら一ミリも離れたくなくなる。さすがにここで押し倒すのはまずい」  ぶつぶつそう言うと、小野寺は千幸を立たせると二人分の鞄を持ってエレベーターに乗り込んだ。
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