私、気づきました。この気持ち。

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私、気づきました。この気持ち。

9月28日 天気:晴れ 段々涼しくなってきて、過ごしやすくなってきた。 拓望は相変わらずだけれど、最近やたらと私にお薦めの本を聞いてくる。 「読書の秋、って言うだろ?」 なんて、ちょっと意味のわからない事を言いながら。 色々本を薦めたけれど、いつもありがとうと言うだけ。 うーん……。何かを探しているのかなあ。 拓望が本を読んだり、何かに集中する時。 それは自分の知的好奇心が動いた時なのを、私は知ってるんだよ。 今日はいつもと違う感じの本を薦めてみた。 江國香織の『東京タワー』 そろそろ私の気持ちに気づいて欲しい。 なーんて思いながら、綺麗な鴇色の栞を挟んで渡した。 10月3日 天気:雨 冷たい雨で一気に寒くなった。 尖端邸で一人、今季初のホットロイヤルミルクティーを飲む。 あーあ。この頃は拓望の事を考えてばかり。 友達に聞いても、「海野君って格好良いけれど、何考えてるか分からなくない?」なんて言われた。 本当にその通り。 あの時図書館で言った一言、もう忘れちゃったのかな。 今日は江國香織の短編集を読もうと思っていたけれど、なんだか読む気になれなくて、ずっと机に置いたまま。 この私が本を読む気にならないくらい、拓望に恋をしている。 こんな事ならあの時、あんな風に思いを突き返したりしなきゃよかった。 どうしたら、この想いは彼に伝わるのかな。 11月22日 天気:曇り 【イルミネーションを見にいかないか?】急に連絡が拓望から来た。 【もちろん行く。】即答で返事を返した。 だって、もう待ちきれない。 私、拓望に告白をする。拓望の探している物はきっと『恋心』 あの時の衝撃の証拠を裏付けたくて、今頃必死に探している。 それを私が教えてあげれば良い。 だって私、好きなんだもん。 拓望の知的好奇心も、美来って呼ぶ声も、何よりあの横顔が。 狡いよ、自分だけで解決しようなんて。 私、こんなに拓望のそばにいるんだよ。 全部、全部私のものに、独り占めしたい。 私の想い、きっと受け止めてくれるはず。 だって、気づいたはずだから。 拓望は自分の気持ちの答えの正解に。
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