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スニッカーズのターメリックかけ、クルミを殻のまま添えて
んぎゅ、んぎゅと一歩踏み出すたびに鳴る音が懐かしかった。幼いころは雪が降った翌日に外へ駆け出し、雪だるまを作りながら町内を一周したことがある。父親が俺の後ろをついてきてくれたから、安心して雪玉を転がすことに熱中することができた。
汐海は雪が降らない地域の出身で、結婚報告のとき以来だろう。その時ははしゃいで雪山にダイブしたりして、子供っぽかった。しかし、今はそんな空気を発してはいけないと自分を自制しているかのようにじっと俺の後ろをついてきている。それが普段の俺みたいに思えた。
「あのさ」
寒さに当てられたのかもしれない寂しさが俺の口を動かしているということにして提案した。
「隣、歩いてくれない?」
「……嫌だ」
「えっ……」
しかし聞き入れてもらなかった。思わず振り向くと汐海は下を向いていた。
「だって、あっちでこんなこと出来ないもん」
俺の足あとに乗るように後を追っていた。無理して大股で俺の歩幅に合わせていて、いつもよりも低い体勢がなんだかおかしかった。
そして思い出した。大雪が降った翌朝、父親を追うかのように足あとをたどっていたことを。俺よりも大きい父の足あとは、俺の膝まであった高さの雪を除ける。そこにいれば俺は安全だった。強くてでかい父親に俺は憧れていた。
「早く進んでよ。この体制、案外きついんだから」
「まったく、子供か」
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