殻は殻の外が分からない

3/3

19人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「どういうことだ?」 「さあ、どういうことでしょう」  知らん顔して顔が落ちた。追うように俺は身を乗り出して、テスクトップの端から顔を出した。 「頼む、教えてくれ」 「どうしよっかな。あ、ならこの仕事代わりにやってくれたらいいよ」 「わかった」 「まったく、これとそれ、だよ」 「え、どれ?」  志緒は自分自身の方に指を指してから俺のネクタイに移る。曲がっているだらしないところ、というわけではないだろう。 「そうやって、シミちゃんに頼み事とかしてる?」 「いや、してない。何か問題なのか?」 「問題だよ。剛史のその、大抵のことは何でもできちゃうのはすごいところだけど、頼らなさすぎるのは問題かな。シミちゃんだって頼れなくなっちゃうし、頼りにされてないんだって思うでしょ」  はぁとおもむろにため息をついていた後、「少しは甘えてあげなよ」と呟いていた。 「なあ、甘えるってどうすればいいのかな」 「なにそれ、のろけ?」 「いや、そうじゃなくてさ、」  プルルルと電話が鳴った。内線の音だった。志緒が受話器を取り、はい、はいと対応しているが俺の方に視線を向けて、わかりましたと受話器を渡してきた。 「剛史のお母さんから電話だって」 「母親から?」  なんだろうと思い、受話器を受け取った。チラッと携帯を見ると何件もの着信があった。嫌な予感がしつつも外線のボタンを押してはい、と答えた。 「母さんどうし、」 『剛史、お父さんが』
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加