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「どういうことだ?」
「さあ、どういうことでしょう」
知らん顔して顔が落ちた。追うように俺は身を乗り出して、テスクトップの端から顔を出した。
「頼む、教えてくれ」
「どうしよっかな。あ、ならこの仕事代わりにやってくれたらいいよ」
「わかった」
「まったく、これとそれ、だよ」
「え、どれ?」
志緒は自分自身の方に指を指してから俺のネクタイに移る。曲がっているだらしないところ、というわけではないだろう。
「そうやって、シミちゃんに頼み事とかしてる?」
「いや、してない。何か問題なのか?」
「問題だよ。剛史のその、大抵のことは何でもできちゃうのはすごいところだけど、頼らなさすぎるのは問題かな。シミちゃんだって頼れなくなっちゃうし、頼りにされてないんだって思うでしょ」
はぁとおもむろにため息をついていた後、「少しは甘えてあげなよ」と呟いていた。
「なあ、甘えるってどうすればいいのかな」
「なにそれ、のろけ?」
「いや、そうじゃなくてさ、」
プルルルと電話が鳴った。内線の音だった。志緒が受話器を取り、はい、はいと対応しているが俺の方に視線を向けて、わかりましたと受話器を渡してきた。
「剛史のお母さんから電話だって」
「母親から?」
なんだろうと思い、受話器を受け取った。チラッと携帯を見ると何件もの着信があった。嫌な予感がしつつも外線のボタンを押してはい、と答えた。
「母さんどうし、」
『剛史、お父さんが』
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