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「最初、私を学生かどうか確認しましたけど、もし私が学生だったら乗せてくれなかったんですか?」
「……まさか、お客の選り好みなんてしませんよ」
運転手さんは苦笑いしましたが、思いもよらない一言を付け加えました。
「でも、仮に僕が乗車拒否してたとしても、お姉さんはどうしてたの、うちの会社に苦情でもした?」
「……いえ」
「そうだよね」
「車番を覚えて、タクシー協会に通報したと思います」
私の言葉に彼は少し驚いたような表情を浮かべました。
「あっ、そういうのは知ってるんだ、じゃあやっぱり乗せてよかったかな」
私は彼の言葉の真意を考えることすら嫌になっていました。
「あはは、もちろん冗談だよ、それではお客様ご利用ありがとうございました」
タクシーは走っていきました。
もう今の心境では到底寝付けそうにないので、宿の自動販売機でくそ高いビールとおつまみを買いこみました。
しかし、ひとつだけかすかな違和感が私の頭をよぎりました。
「なんであのタクシーはこんな不吉な雪の日に走ってたんだろう?」
たぶん私は運がよかったのだ、早く部屋に戻って何も考えられなくなるまで飲んで寝よう、私はただそれだけを心に抱いていました。
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