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その後。譲渡会にも参加し、ネットでペットを引き取ってくれる人を募集した。この際転売目的などでないことや長く飼ってくれそうな人かを見抜くため、相性がいいかを見る為という名目で実際に会う事と住所と連絡先を教えてもらうことを条件にした。いかにもペット業界のバイヤーのような奴もいたのでそういうのははじいた。
犬猫や爬虫類、珍しいやつなんかはすぐに飼い主が決まったが、最終的には亀と意外にもボールパイソンが残った。蛇は人気があるものだが、転売目的っぽい奴しか応募がこなかったのだ。
じいちゃんにその話をしたところ、俺が飼おうと言ってくれて亀と蛇はじいちゃんに貰われていった。何で? と聞いたらそいつら吠えないし散歩必要ないだろ、俺が死ぬくらいに丁度寿命迎えそうなやつらだし年寄りは体力かからない方がいいんだよ、と返ってきた。いや、世話って結構体力使うし、あんたカボチャがつまった20kgのコンテナ一日何個も運んだあと筋トレしとるやん。
しばらく経ってじいちゃんが蛇と亀の写真を送ってくれた。蛇はびっくりするくらいでかくなって、じいちゃんにマフラーみたいに巻き付いている。
「これ、絞め殺そうとしてない?」
「よく見ろ、餌のネズミにとびかかった時の巻き付き方と全然違うだろ。エサの時は玉結びみたいな締め付け方してたけどこっちは完全にゆるゆるだ、懐いてるんだよ。いや、暖が取れる動く木か何かだと思ってるのかもな」
「よく見てるねー克己」
亀は庭にある小さな池で飼っているらしい。田舎は無駄に土地があっていいだろ、とじいちゃんが自ら池を作っていたのだ。住処がでかくなって悠々と過ごしているようだ。お相手がいないので繁殖しないだろうとは思うが、近くに用水路やため池もあるし亀は意外と陸上を歩く。うっかり別の亀がきて交配したら増えるからそこはちゃんと対策してくれよと言っておいたが。
小さな手紙も一緒に入っていた。
『蛇飼ったら家からネズミが消えて快適だ。あと、亀はこの間どっからか侵入してきたワニガメを退治してくれて役に立ってるぞ。今更だが、こいつすっぽんだったんだな』
「え、凄い!」
「どこの世界にワニガメに勝つすっぽんがいるんだよ、どうなってんだ。あと蛇を家の中で放し飼いにするんじゃねえよ」
「飼い主変わるとこんなに変わるんだね、おじいさんに亀ちゃん食べないでねって言っておいて」
「変わりすぎだろ、何でこんなに戦闘力があがったんだ、ドラゴンボールの住民か」
「わかる気がするな、克己のおじいさんだし」
「今の言葉をわかりやすく20文字以内で説明しろ、俺が苛ついたり納得できなかったら前歯引っこ抜くからな」
「そういうところだよ!」
叫ぶなり壮也は全速力で逃げた。まあ余裕で追いつくけど。びくびく隠れていた以前と違って回し車を発電しそうな勢いで回しているハムスターを見ながら、マジで飼い主とペットって似るんだなと思った。
END
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