雪の日

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 目の前に広がっているのは、見慣れた灰色塗れの景色とは違う、白銀の世界だった。  屋根を覆い尽くし、木々を包み込み、アスファルトを飲み込む、眩き塊。不意に吹き付ける風が、肌にピリピリとした冷たさを伝えてきて、思わずマフラーをグイと引き上げてしまう。  ザク————。  玄関から一歩外に出ると、雪を踏み締める音がした。どうやらここまで積もっているらしい。  この音を何度も聴きながら、私はアパートの階段を降りていく。  ザク、ザク、ザク、ザク————。  なぜだろう。いつもよりも深く沈み込んでいく足元とは裏腹に、私の気分は徐々に高まっていった。この音、感触。全てが無性に愛おしくて、自然と口角が上がってしまう。  階段を降りると、改めて雪化粧した世界にため息が漏れる。マフラー越しですら白く染まった私の息は、白銀の凍てついた世界の中に消えていく。その程度の熱ではびくともしないとばかりに、大粒の雪は今も降り続けていた。  しかし、そんな態度と粒の大きい雪であろうと、私の行手を阻むことなどできない。
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