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車窓に流れる景色にどんどん緑が増していく。
こんなに人の乗っていない電車に乗るのは久しぶりのこと。
リュックを隣の席に置き足をのばすと、帰ってきたことを実感した。
私は吾妻郡という群馬の田舎町で育った。
1時間に1本しかない電車、ビルも繁華街もない場所。
東京の家から3時間はかかるこの街に帰るのは正月以来だ。
と言っても今回の帰省は実家には訪れない。
友人に会うわけでも、思い出のある地に行くわけでもない。
こんな気分で、誰にも言わずに、地元に帰ることがあるとは思いもしなかった。
気休め程度にいじるiPhone。
いつもなら何となくで読み進めるLINEニュースもイヤホンから流れてくる音楽も、頭に入ってこない。
それでも、何かしていないと得体の知れない不安はどんどんと大きくなるばかりで私の平常心を奪っていく。
緊張しているのだ。ここにきて少しの後悔もある。
田舎町にどっしりと構える古びた建物に足を踏み入れる。
町役場___、都会の綺麗なソレとは違う温度に背筋を伸ばす。
手続きは難しいものではなく、無愛想な役員の言われるままに名前を記入し、免許証を差し出すだけだった。
「こちらが戸籍謄本になります。」
『ありがとうございます。』
450円と引き換えに手にした一枚の紙切れ。
渡される際にジッと顔を見られた気がしたが、合った視線はすぐに逸らされて、よければ封筒お使いくださいね、と温度のない声で案内をされた。
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