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1.兄妹
夢を見る。
あれほど朝が弱い私でも、ハタと目を開けてしまうような、夢。
右半身に温もりを感じて目覚める朝。
『…はあ、』
一息ついてiPhoneに手を伸ばす。
11/20、土曜日、午前11:10
もう昼前だというのは気にせず、電気をつける事もカーテンを開ける事もなく、ベッドに寝転がったままでiPhoneをいじり続ける。
ごそごそしていても、隣で寝ている男は起きる様子がない。
私が1時過ぎに寝た時にはまだいなかったから、飲み歩いて遅くに帰宅したのだろう。
『もう、またお兄ちゃん私のベッド入ってきてたでしょ。』
「まあまあ。誰かが横にいた方が寝やすいときってない?それよそれ。」
兄は私の剥がした布団をモゾモゾ自分の方に寄せて、背を向けて欠伸をした。
『冷静に考えたら頭イってるからね?』
私は社会人の兄と二人で暮らしている。
昔から仲がいいと評判だった私たちは、私の大学進学と兄の就職のタイミングで二人家を出て東京にやってきた。
この都会に初めこそ戸惑ったが、変わり者だが優しい兄の存在と、充実した大学生活のお陰で毎日があっという間に過ぎる。
「ハタチになった途端兄離れか?可愛くない妹だこと。」
大学2年になったこの春、私は二十歳の誕生日を迎えたばかり。
全てが順風満帆、素晴らしいこの生活が続くと信じて疑わなかった。
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