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大学から帰宅してアパートのポストを覗くと、西野美弥さま、と私の名が書かれた灰色の封筒を見つけた。
『ん?』
差出人の無い手紙。
自分宛に手紙が届くことなんて、日常生活ではあまりない事に少し違和感を感じながらも、封を切る。
何も疑うことなく。コレが私の当たり前をガラリと変えることになるとは、思いもせず。
中には一枚の便箋、そして一枚の写真。
『…ん?』
その写真に写っている人物に、目を疑った。
息が止まるほど驚く、とはこのことを言うのだろう。
黒いパーカーを被った人物。
見覚えのある目、鼻、口。
『えっ…え?』
そこに写っているのは、まるで私だった。
まるで、というのは厳密には私ではないということ。
この写真に身に覚えもなければ、こんなに髪も短くない。
それでも、私、と言ってしまうほどには、同じ目、同じ鼻、同じ唇をしている。毎日触れ、向き合っているこの顔を、私は誰よりも知っているのに。
私じゃないナニカが、私の顔をしている。
?
『何よ、これ。』
鳥肌が止まらず、慌てて持っていた写真を床に落とした。
こんな時に限って兄もいない。
短く吸った息を一気に吐き出して、恐る恐る、同封されていた便箋を開ける。
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