1.兄妹

2/6
前へ
/95ページ
次へ
*** 大学から帰宅してアパートのポストを覗くと、西野美弥さま、と私の名が書かれた灰色の封筒を見つけた。 『ん?』 差出人の無い手紙。 自分宛に手紙が届くことなんて、日常生活ではあまりない事に少し違和感を感じながらも、封を切る。 何も疑うことなく。コレが私の当たり前をガラリと変えることになるとは、思いもせず。 中には一枚の便箋、そして一枚の写真。 『…ん?』 その写真に写っている人物に、目を疑った。 息が止まるほど驚く、とはこのことを言うのだろう。 黒いパーカーを被った人物。 見覚えのある目、鼻、口。 『えっ…え?』 そこに写っているのは、まるで私だった。 まるで、というのは厳密には私ではないということ。 この写真に身に覚えもなければ、こんなに髪も短くない。 それでも、私、と言ってしまうほどには、同じ目、同じ鼻、同じ唇をしている。毎日触れ、向き合っているこの顔を、私は誰よりも知っているのに。 私じゃないナニカが、私の顔をしている。 ? 『何よ、これ。』 鳥肌が止まらず、慌てて持っていた写真を床に落とした。 こんな時に限って兄もいない。 短く吸った息を一気に吐き出して、恐る恐る、同封されていた便箋を開ける。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

106人が本棚に入れています
本棚に追加