続・地獄 ver1.0

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それは夕方のドトールでのこと。 ドトールだけでなく全てが地獄と嘯いた女は、 スマホを取り出してSNSに興じる。 生の全てが地獄ならば、 果たして貴女の死後はどうなる?と私は問う。 にやけ顔でスマホを眺めつつ、女は答える。 「勿論、地獄に堕ちるわ。  よしんば私が天国へ行けたとしても、  生温い天国よ。  それはむしろ地獄。  だから、凜として地獄に堕ちるわ。  ただ、痛いのは願い下げ。  熱いのも勘弁。  寒いのもお断り。  八寒地獄なんて悲惨よ。  臛臛婆地獄だなんて寒過ぎて 『ははば』としか言えないのよ。  信じられない。  ドトール程度の地獄。  それが私には似つかわしい地獄なの。」 死んでもドトール。 一体、どれだけドトールが好きなのだ。 私はどうなる?と問う。 女は急に真面目な表情となり、 視線をスマホから外し、しばし物思いに耽る。 そして、スマホを置き、俺を見つめながら答える。 「あなたは、そう、天国に行くわ。  あなたは親切だし、  多くの人はあなたを嫌うことは無いわ。  今この瞬間でも、  私はあなたに感謝しているのよ。」 それはどうも。で、どのような天国? 女は両の手をテーブルの上で組み、 その上に顎を乗せ、遠くを見るような目つきとなる。 「そうね、あなたの天国  それは土曜のショッピングモールみたいなものね。」
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