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どこかで恋が始まった
えーと教本ではこの角を曲がった所で女子が待ち受けている?はずだから、俺は一旦行くと見せかけて横に避ければいいわけだ?
よし、いざ行かん!我は不当ないじめに立ち向かう戦士なり!
なーんて、調子にのりすぎか?
んじゃ行きますかっ―――と。
一歩踏み出し角から頭をのぞかせてすぐに横に避ける。
俺のすぐ横を食パンを咥えた女子が走り去っていく。
うお!すげー!成功じゃん!!
かとりーぬ先生まじっぱねーす!
と喜んだのも束の間。Uターンしてさっきの食パンを咥えた女子が戻って来た!
え―――――!?そんなのあり???
かとりーぬ先生!俺、どうすればっ????
やばい!気づいた時にはもう遅く、俺は動く事もできずにただ見ているだけだった。
迫りくる女子がスローモーションに見える。
「きぃやぁあちこーくぅーちーこーくぅ」
あーもうダメ!
俺は諦めて目を瞑り衝撃に備える。
―――が、いくら待っても何の衝撃も受けなかった。
代わりに誰かに抱きしめられているような―――?
あ、れ?
不思議に思って目を開けると、心配そうに俺の顔を覗き込む見知らぬ男子生徒の顔があった。
整った顔立ち。長い睫毛、黒目がちの瞳には星が輝いて見える。
―――え?王子様?
「――キミ、大丈夫?」
声までイケメンとか……。
「キミ?」
「あ、大丈夫、です」
「そ、よかった」
そう言って見知らぬ王子様はふわりと笑った。
やべーなんなの。やべーよ。
やばいのは俺の語彙力か。
どこかで『きゅん』と恋の始まる音がした。
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