王子様は転校生

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王子様は転校生

今朝の王子様の名前は阿久津義経(あくつよしつね)見た目に似合わず和風な名前。家の都合で中途半端な時期に転入してきたらしい。 両親はどっかの大企業の社長で、社員も数万人規模だとか。 家は豪邸で外車が何台もあって、執事やメイドさんが何人もいるとか。 超が付くほどのお金持ちで一人っ子だかららしい。 何で今朝会ったばかりのやつの個人情報を知っているかというと、全部クラスの女子の噂話だ。 本当女子の情報収集能力侮りがたし。 そして、俺の隣りの席に座る噂の的の王子様は自分に集まる女子の熱視線もどこ吹く風で、こちらをじーっと見ていた。 「な、なに?」 「(みやび)って呼んでもいいかな?」 随分と唐突だな。イケメンってやつは何を考えているのか全く分からねぇ。 でも―――それを嬉しいと思ってる自分の事が一番分からなかった。 「別にいいけど…じゃあ、お前の事は義経って呼ぶから」 「あぁ」 義経はそう言うとくすりと笑った。 「なん、だよ」 「いや、こういうのいいなと思って。俺、友だちと下の名前で呼び合った事なんてなくて、とても新鮮なんだ」 そう言って目を細めて俺を見る義経の瞳が優しくて、俺の心臓がどきどきと煩く騒ぐ。 じゃ、じゃあ初の名前呼びが俺って事? 「ふ、ふーん」 口ではそっけなくそう言ったものの、そわそわと落ち着かない気持ちになった。 俺、何か変?
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