ぷろろーぐ

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ぷろろーぐ

俺には最近悩みがある。 最初は勘違いだと思った。 登校中の曲がり角。 食パンを咥えた女子にぶつかるのだ。 それも毎日。 いつも知らない女子で、声をかけると顔を真っ赤にさせて猛スピードで逃げていくんだ。 食パンにはたっぷりのマーガリンと苺ジャムが塗られていて、ぶつかった俺の制服にそれはべーったりと見事にべーったりと……。 何か女子が言っていたが俺はそれどころじゃない。 逃げていく女子の背中を見ながら泣きたい気持ちになる。 何なの?これって新手のいじめかなんか? 毎日毎日マーガリンと苺ジャムで汚される俺の制服。 洗っても洗っても苺ジャムのシミで所々赤く染まってしまったシャツ。 また母ちゃんに怒られる…。 一人取り残された俺は深い溜め息をついた。 こんな事が他にも細々と色々ありすぎてわけが分からない。 昨夜俺が散々嘆いていたら姉貴がいい物を貸してくれた。 「悩める弟よ。これは教本よ。これ見てしっかり勉強しなさい」 なんて言われ渡された一冊の本。 『あなたのハートを狙い撃ち♡』 著:かとりーぬ 緊張しつつ一ページずつめくっていくと―――なんだこれは。 俺の身に起こった事が事細かに書いてあるじゃないか! ・登校中、パンを咥えた女子と曲がり角で出合い頭にぶつかる。 ・意味もなく女子がぶつかって来る。 ・やたらと俺の目の前で女子が落とし物をしていく。 ・机からはみ出てるにも拘らず教科書を忘れたと言い張る。 ・物言いたげに遠くから睨みつけられる。 ・よくわからない呪いが書かれた手紙を机や下駄箱に入れられる。 やべ―――なんだこれ、まじですげー本だ! これ読み込んだらある程度予想できて回避できるって事か? うは、やべー。 夜中だというのに高笑いをして母ちゃんにこっぴどく怒られた。 だが、そんな事は今の俺にとっては些細な事。 というわけで、今朝の俺はいつもと一味違うのだ。 「フハハハハハハハハかかってきやがれ!」 勝利を確信して俺は有頂天だった。
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