第三話 五丈原の戦いと諸葛亮の死

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蜀軍は、廖化の部隊の外、張翼、呉班、姜維等で防いだ。また、上方谷では、司馬懿が、兵糧を獲得し、その場を足掛かりに魏延を攻めた。魏延は、司馬懿たちを攻め上方谷に足止めしたが、諸葛亮は、王平に内密にあることを命じた。王平は、 「魏軍を火攻めするのはわかりますが、魏延軍も巻き添えになります」 「王平、魏延は勇猛果敢であるが、後の憂いとなる男、ここで亡き者になるならば、将来の皆のためかもしれぬ」 「丞相…… ぎ、御意」 王平の放った火矢により、兵糧に油が染み込み、その下には炭と爆薬が積まれていたため爆発し、上方谷は大炎上した。 「何っ!火だと!皆の者、逃げよ!」 「父上!早く退却を!」 司馬懿親子は、諸葛亮の罠だと知り、兵を撤退しようとしたが、魏延率いる蜀兵に退路を絶たれ、火と弓矢の餌食となった。 魏延も爆発の影響で軍を損失し、火中の中にいた。 「王平め、我がいることを知って火矢を討ったか!この恨み晴らそうぞ、必ずや罰してもらうぞ」  魏延は、そう言いながらも、魏軍を蹴散らしながら、自分の退路を切り開いていた。 司馬懿は、その場にしゃがみ込み、戦を放棄した。 「皆、兵士たちは力を尽くしてくれた。この窮地は私が招いた過ちだ。この司馬懿は、皆を許す故、武器を置き蜀に投降せよ」 「いえ、ここにいる兵は皆、大都督に命を捧げます!」 「私も降りませぬ」 火にやられる者、矢に当たり倒れる者、倒れても司馬懿の側を囲み、歌う魏兵たちであった。 その頃、本陣では、郭淮と孫礼が、蜀軍の手薄なところに打撃を与えていた。廖化、張翼、呉班、姜維は魏軍に推され、本陣も突破されそうになっていた。 廖化は、本陣の前で、廖防陣を布き、最後の砦として盾兵での守りに必死であった。 「廖化将軍!敵が多すぎて、突破されそうです!」 「丞相は逃げたか!」 「まだ、逃げずに堪えろと言っており……」 「は、速く逃がすのだ!」 諸葛亮は、曜に諭され、籠に乗せられ、上方谷の山中へと逃がし、食料庫爆破の様子を見に行かせた。 廖化は、諸葛亮が逃げたことを聞き、陣を解体し逃げる命を出した。 「皆、祁山へ退却するぞ!熊、甘櫰、殿を頼む!」 「張翼軍も、退却を開始しました!合流します」  郭淮は、敵陣が退却をする時に伝令があり、司馬懿が火中にいるという事を知った。 「な、何という事だ!こうしていられぬ、助に行くぞ!」  魏軍は、蜀軍の追撃をせず、上方谷へと向かった。 諸葛亮は、山の上より火中の中、歌を歌う魏軍を見た。楊儀は、 「司馬懿が、あそこにおります、これでやっと北伐が成功しますぞ!」 「ああ、先帝。これで、念願の漢復興が叶いますぞおぉぉ……」 魏兵に敬服しながらも、諸葛亮は、泣きながら長安以西を平定される予定になることを、天に居る劉備に向かい拝礼した。 しかし、その時雨が降り出した。皆、空を見上げ、呆気に取られたが、その雨により火は消え、司馬懿と兵士たちは喜び、その場で抱き合った。 「た、助かったのだな……」 司馬懿は、重い腰を上げ、退却の命令を出した。魏軍は、上方谷より退却し、それを見た諸葛亮は、天を仰いだ。 「天よ、天よ、なぜ蜀漢に味方せず、魏に味方するのか!」  諸葛亮は、そのまま、血を吐いて倒れた。楊儀と側近は、諸葛亮を助け、籠で祁山の陣営まで運んだ。    諸葛亮は、一命はとりとめたものの、体調はすこぶる悪かった。床に伏し、楊儀と馬岱、姜維など側近しか会えない日が続いた。 その頃廖化は、祁山陣営にいて、軍備を整えていた。先の戦いで疑問に思っていたことがあり、司馬懿と共に火中で危険なところだった魏延について、姜維に質問した。 「姜維殿、一つ良いでしょうか。上方谷の戦では、丞相は、魏延が司馬懿と討ち合い、火計をすれば巻き込まれると知っていたのでは?」 「廖化、その話は、内密で、魏延本人には言えぬ話だ」 「それは、どういうことですか?」 「魏延を、そのまま、亡き者にする予定であったのだ」  廖化は、愚の音も出なかった。魏延は、今では、蜀随一の武将で、軍事最高司令官。兵士の人望は厚く、勇猛である。だが、確かに性格が粗暴であり、自分勝手であるため、政務官や合わない武将も多くいる。しかし、それだけで、消される理由になるとは思えない。 「廖化、魏延は、丞相がいなくなれば、謀反を起こすだろう、と、丞相は読んでいる」 「御意、心の内に秘めておきます……」  北伐の佳境の時、重大な内情を知ってしまった廖化であった。  蜀は、諸葛亮の指示の下、五丈原で陣を布き、司馬懿はまた防御一方で対応した。堅く防陣を貫き出てこない司馬懿を、討って出させるため、諸葛亮は幾度となく挑発を試みた。   
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