第四話 西方の脅威

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 皆、戦の準備に取り掛かった。数日後、盟を結んだ迷当大王が姜維に謁見してきて、互いに手を取り合った。 「お互いの敵は魏である。迷当大王よ、この戦が勝ちとなれば、多大な報酬を与える」 「姜維殿、こちらも逆賊を討ち、我が羌の繁栄を望む」  騎馬数万が加勢し、一気に士気が上がった蜀軍は、隴西へと出撃した。  南に陣取る蜀軍、西に陣取る羌族等の兵は、五万を越え、郭淮の擁する三万の兵を挟むように攻めた。 「敵は郭淮であり、守備戦は手強いですが、羌族と挟み撃ちをしており、こちらに勝機がありましょう」  姜維に王平は話した。戦は、蜀軍が圧し気味に進み、数日敵兵は、辛くも守り切っている状況であった。しかし、十日続いた均衡が、一気に崩れた。  郭淮の軍が、陣を夜間の後に数里退かせており、主力が移動していた。 「姜維様、郭淮の軍は、主力がどこかに移動した模様、追って行動を探っています」 「王平、これはどういうことか?」 「さあ、敵の攻撃が見えません」  その時、羌族軍から急使が届いた。 「迷当軍が、魏軍の急襲を受けております!」 「な、何っ!」  敵の主力は、魏の援軍を率い、迷当軍を直接攻撃した。迷当軍は、必死で戦ったが、ほぼ壊滅状態まで追い詰められた。 「姜維将軍!このままでは、迷当大王と羌族は崩壊します。我が軍に援軍を命じ下さい!」  廖化は、姜維に訴えた。しかし、姜維は、 「蛮族の将など、ほっとけ。要所を取ったが、敵が羌族を討つとは。退却だ」  姜維は、無慈悲に言い放った。廖化は、 「将軍、お考え下さい。羌は我々と手を組み、未来のために戦っていたのですぞ!」  その言葉も空しく、陣を後に姜維は行ってしまった。廖化は、姜維の態度に不義を感じざる負えなかった。  羌族軍を討ち滅ぼし、迷当大王の首を獲った郭淮は、軍を南征させ退却している蜀軍を追撃させた。 「報告します、魏軍が追って来ております!」  王平は、廖化と張翼に後陣を命じ、本陣を急がせた。廖化と張翼は、守備体系を布陣し、敵の追撃を待ち構えた。  魏軍は、郭淮と、もう一人猛将を控えていた。敵の追撃は、怒涛のように勢いがあり、廖化の廖防陣でも、防ぎきれないほどであった。敵将が、果敢に攻めてくるので、廖化、甘櫰、熊の三人で、攻めた。 「魏の猛将よ、大将はここなり!」 「大将、廖化か。我が名は、夏候覇!夏侯淵の子なり!」  ここに来て、義の猛将夏侯淵の子である夏侯覇がやってきたと、蜀軍は士気が落ち恐れをなした。 「夏侯覇、恐るべし武力の持ち主。これでは負ける。張翼の応援があるうちに退却だ」  廖化は、急ぎ陣を解き、退却を開始し、漢中へと引き換えした。 魏の郭淮は、羌族の迷当大王の攻略、さらに氐族三千余部を降参させ、関中に強制移住させた。その功績で左将軍に昇進し、涼州一帯の異民族をも手中に収め魏の守りは強化していった。
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