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第二話 司馬懿対諸葛亮
北伐は、魏の大都督と蜀の丞相の戦い、つまりは、司馬懿と諸葛亮の知略の戦いと言っても良い状況となっていた。お互い、隙あらばつけ込み、白兵戦の打ち合いというよりは、策によるだまし合いといった感じである。
司馬懿は、
「敵は、兵糧が常に苦戦している、この度も必ずや戦をしかけずに待っておればなんとかなる」
と言っていた。
諸葛亮は、成都より参軍として、諸葛亮が信頼を置いている、楊儀を相談役として側近とし、姜維を細かい手先として使い、自分の策や軍略のノウハウを教え込んだ。また、この北伐の最大の課題である、兵糧不足を解消する作戦をまた一つ練っていた。
「魏延、姜維よ、軍を率い、ここ等雍州一帯の麦を刈り取り頂こう」
王平と張嶷に祁山本陣を守らせ、魏延と姜維を率い、鹵城にひそかに出兵した。攻めたい諸葛亮と、損失を出さず守る司馬懿、策士同士対決となった。
司馬懿は、そのことを見越し、伏兵を配置したいたため、諸葛亮は、魏延と姜維を麦獲得に向かわせ、自分は本陣を率い司馬懿軍と戦った。諸葛亮は、この食料調達の策には一計があった。廖化の軍を見て、
「廖化よ、お主のそこの配下、私と背格好がよく似ているな」
「お、俺?」
甘櫰が、首をかしげた。確かに、背は高い。熊と曜も首をかしげた。
「丞相、甘櫰でしょうか。いかがしたしました?」
「一つ、私の着物と似たものがある。これを着させ、車に乗り、隊を率いて右の間道で伏せてくれ。我が部隊が左の間道に入ったら、出て、魏軍をおびき出すよう」
諸葛亮も、一計を謀っていた。司馬懿は、諸葛亮が少ない兵で追撃に出てきたと喜び勇み、諸葛亮の車のある陣に突撃した。
「敵は、我が軍を侮り、少ない兵で守りだした。今だ、突撃で攻めよ」
司馬懿の号令で、魏軍は、諸葛亮の軍に突撃を開始した。諸葛亮の車は、途中で向きを変え、山の間道に入っていった。しかし、それを魏軍が追おうとした瞬間、左の間道に隠れたはずの諸葛亮の車が今度はかなり離れた右側の山の間道から出てきたのだった。
司馬懿は驚き、眼を疑ったが、
「ぐぬぬ!何をしている、諸葛亮は、右側の山の間道だ!」
と、魏軍を向かわせ、右側の山道から出た諸葛亮を攻めた。この右の諸葛亮は、偽物の甘櫰であり、蜀軍は廖化の部隊である。魏軍は、翻弄されていた。魏軍が攻めよると、山間に隠れ、再度別方向から出てくる。廖化は、右側の山の間道に隠れ、別の間道から出てくると言う事を繰り返した。
「し、諸葛亮め、この司馬懿を馬鹿にしおって!」
魏軍は、このため、一向に諸葛亮の軍を捕まえられずに時間稼ぎをされ、魏延と姜維に、この地域の麦を片端から麦を刈り取られ、補給体制を強化させてしまった。
諸葛亮は、その他、西方異民族と連絡を取り合い、共同戦線を張る策を巡らし、裏からの攻撃を睨ませたため、司馬懿は退却したのだった。
「一兵も損じず、麦を大量に手に入れた挙句に、羌族と手を結ぶとは。やはり、丞相は天才である」
廖化は、改めて諸葛亮の才能を評価していた。
数日後、司馬懿は、蜀軍が、魏の領地から奪った麦を、麦打ちしている時を狙い奇襲を掛けようとした。
「諸葛亮め、流石に、食う物を支度せねば軍を動かせまい」
しかし、このことを諸葛亮は見抜いており、姜維、魏延、馬岱を伏兵にして祁山北部に軍を配置していた。司馬懿はまんまと引っ掛かり、魏軍は大敗を喫してしまった。
郭淮は、司馬懿の才能をよく知っていたため、その上を行く諸葛亮の知略を恐れた。
「くそ、仕方がない、持久戦に持ち込む」
司馬懿は悔しがっていたが、魏軍は、祁山を包囲したまま堅く陣を布いた。司馬懿は、蜀も食料に困ることを知っていたため持久戦に持ち込めば、勝てると踏んでいた。
蜀軍は、あの手この手を使い、魏軍を挑発したが、この度は全く挑発に乗ってこず、動かない司馬懿に蜀軍の兵糧は、また厳しくなっていった。
長安より、魏の援軍が到着し、この戦いにおいては、大きな総当たりとなる場面となった。援軍に到着した武将は、張郃であり、司馬懿も張郃には恐れを抱いているほどであった。
蜀軍では、魏の援軍が来たという事で、諸葛亮は、一戦交わると踏んでいた。敵将が、張郃と聞くと、蜀将は、皆震えあがるほど、畏怖の念がある敵である。廖化もその一人であった。
「魏の中では、最も功績のある武将五本指の中に入るであろう張郃。できれば戦いたくないものだ」
廖化が呟くと、張翼は、
「若き時から幾千もの戦に出た猛将であるが、張郃も人だ。老化も現れ、変化に強かったはずであるが頭も固くなるだろう」
張翼は、あの張良の末裔だけあり、戦に関しての自信は強かった。南中守護の任務を任されていたが、一時的に北伐へと参軍していた。定軍山攻防戦の時は、趙雲軍の将として戦い、大いに活躍したところを趙雲に見初められ、功を挙げていたのだった。
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