第二話 司馬懿対諸葛亮

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 蜀軍は、五万の兵を率い、魏延を大将とし、右翼を張翼、中央に王平、左翼を廖化が担い、敵将張郃、郭淮、孫礼等と対峙した。 廖化は、敵右翼に向かい陣を布いた、郭淮と対峙し、相手の様子を伺っていた。廖化は、 「好敵手よ、ここでも相対するか」  と、心の中で呟いた。  対する郭淮も、 「廖化か、攻めるも守るも、手こずるかもしれぬ。ここは、様子を見るか」  と、郭淮も積極的に交戦しようとは考えなかった。  廖化の陣に、一人の農夫が訪ねてきたと、伝令より報告があった。廖化は、不思議に思い、その農夫と会った。 「久しぶりだな、廖化よ」 「ぬっ!貴方は、廖立殿!」  不意にやってきたのは、庶民に降格され、農夫となっていた廖立であった。 「廖化よ、敵に苦戦しているようだな」 「廖立殿、分かりますか?」 「農夫となっても、鳳雛に次ぐ知略を持つと言われたこの廖立であるぞ、お主の心も手に取るように分かる。敵の様子もな」  廖立は、庶民となってからも、この北伐の様子や地理状況を把握し、戦となった場合の助言ができる時を待っていたと言う。 「廖化よ、敵の司馬懿は、蜀の食糧事情をよく見抜いている。このまま、睨み合いで補給を減らすのが目的よ」 「ううむ、郭淮も攻める隙が無い。どうしたら……」 廖立は、地図を見て、こう言った。 「郭淮は、お主と似ている。故、奇襲をかけるべきだ。裏を行き、山の上から奇襲をかけよ。廖化の陣をほぼ、裏に回し、我らが攻撃の起点となれ」 「助言、ありがとうございます」  廖化は、廖立に手を合わせ、礼をした。 「成功のあかつきには……」 「あかつきには……?」 「丞相に、再度、仕官したい旨を取り次いでくれないか。この、廖立、過去の過ちは水に流して欲しい」 「そうですか。廖立の願い、伝えてみるうえ、戦の状況を見ていて下され」  廖化は夜、甘櫰に少数の部隊を本陣に残し、人が多くいるようにかまどの火を焚かせ、熊、曜、馬泰を引き連れ裏山に登った。明け方、表の方から、甘櫰が銅鑼を鳴らし、いかにも攻めるよう注意を引き付けた。 「む?廖化は、血迷ったか?我が軍は守りの陣は鉄壁であるぞ。このまま攻めれば、敵陣は被害が多かろうに。防御の陣を布け!」  郭淮は、廖化の行動に不思議そうに思いながらも、正面からの攻撃に備えた。その後、廖化は、裏から突撃の銅鑼を鳴らした。 「敵陣へ突っ込めぇー!」 「おおおー!」  熊の部隊を先陣に、郭淮の後方を攻めた。 「な、なにぃ! 後ろから攻めただと?」  郭淮の軍は、混乱し、陣を立て直そうにもうまくいかなくなっていた。 「郭淮、分かったぞ。お主の軍は、強い主への信頼と毎日の鍛錬の積み重ね。同じ動きに対し強固な強さを誇る。しかし、危急の混乱状態には弱い。それは、将たる郭淮の性格そのもの」  大打撃をくっらった郭淮本陣に、廖化が、近づこうとしていた。郭淮は、廖化を見つけるや否や、 「廖化、郭淮はここにいるぞ!」  と、一騎打ちを挑んできた。廖化は、受けて断ち、剣を構えた。 「郭淮よ、某は好敵手に出会った。行くぞ!」 「廖化よ、敵ながらあっぱれ、この度の奇策は、お主の知恵ではないな」  お互い、語りながらも、剣と矛の火花を散らした。数合合わせ、廖化が、 「さすが郭淮殿、他の献策だと知っていたか」 「正攻法の路を行くお主が、大胆な奇策を使ってくるからな」  お互い、一騎打ちは互角で譲らないため、二人とも陣に引き返した。白兵戦は、曜と馬泰が両翼から敵陣を蹴散らし、魏軍はほぼ壊滅状態となっていた。  魏軍の大将である張郃は、郭淮の軍が負けていることを聞きつけ、援軍を送った。張翼と王平は、それぞれ、攻める好機と感じていた。それは、諸葛亮も好機ととらえ、全軍に攻撃命令が下された。 「蜀軍の猛攻で魏を祁山から追い払え!」  魏軍の陣形配列の均衡が崩れたため、張郃でも蜀軍の攻撃に耐えきれる布陣を組めず、退却し祁山を後にした。  その日は、久々の完勝であり、大いに祝勝会があげられた。廖化は、諸葛亮の前に呼ばれ、拝謁した。 「廖化、その方の奇襲攻撃が当たったな。まさか、正攻法を曲げないお主が、いきなり突飛な攻撃に出るなど、敵も思いもしなかっただろう」 「ええ、郭淮も全く予想していないようで、混乱していました。して、この度の奇策は、とある者の助言を貰ったからです」  諸葛亮は、不思議そうに問い、 「ほお、その者とは?」  少し間を開け、廖化は答えた。 「廖立です」
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