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「で、及川の代わりに俺の気持ちを聞きに来たと。澪、お前、バカなの?ただのパシリじゃね?」
教室で二人になったところを見計らって、蕾の気持ちを伝えてる私。
あぁ、最悪。私、何してるんだろう。佐々木、怒ってるよね。
私だって分かってる。バカなことしてるくらいの自覚はある。
佐々木 柊はクラスは違うけど、同級生で。
二人でいる時だけ、私のことを苗字の紺野じゃなくて、澪と呼ぶ。
小学校のときは、みんな下の名前で呼んでたから、名残なのかもしれないけど。
彼は愛想があるかと言われると、ちょっと違うけど、優しいところもあって、それに最近、背も伸びてきたから、女子の中でも潜在的な人気がある。推しランキングで上位に名前があがるようになったらしい。
蕾が目をつけるのも頷ける。
「あの、それで、佐々木は。。。。」
「澪は及川と俺を付き合わせたいの?」
ちょっと不機嫌そうに私を見る佐々木の視線が痛い。
だから私は視線をそらすように、俯くしかなくて。
「及川に嫌われたら、澪、またクラスで孤立するんでしょ?」
何も答えない私に佐々木は溜息をついた。
「。。。いいよ」
横を向いた佐々木はあっさりと言った。
「でも、俺、中学卒業したら、東京離れるから、それまでな」
東京を離れる?佐々木、いなくなるの?
気持ちはそっちの一言に引っ張られる。
私たちは中高一貫校に通学していたから、これからも普通に同級生でいられると思ってたのに。
「転校ってこと?」
辛うじて、私の口から出た一言。
「そんなとこ。中学の最終登校日を待たずに引っ越すから、あと2カ月。だから、それでいいなら。。。」
『それでいいなら』
佐々木の一言が頭の中でリフレインしている。
体温がぐっと下がったような気がした。
佐々木が、蕾と付き合う。。。。。
体は冷えてくだけなのに、胸の奥が火花が散るみたいにピリピリしている。
蕾が狙っていたのは、来るクリスマスっていうビッグイベントにふさわしい彼氏作り。
クリスマスに彼氏がいないなんて耐えられないからって言ってたし。
佐々木なら蕾も思いっきり納得だろうな。
そんなことを考える。
「じゃ、そう伝えておいて。俺の連絡先、教えていいから」
教えていいの?
それも私から教えるの?
片手を上げると、佐々木はそのまま立ち去っていった。
俯いたままでいると、ポタポタト地面に雫が落ちていく。
私、泣いてるんだ。
バカだな。。。。私。。。
ホント、バカだ。
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