33歳のクリスマス

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 ハァ。心の中で思い切り溜息をついた時だった。  隣のテーブルで、これ見よがしに彼氏がサプライズでプロポーズをし始めた。店側にも協力を依頼していたらしく、彼女が頷くとお店のスタッフからケーキと花束が贈られ、店内には拍手が起こった。  何でこんな時に、わざわざ隣で!?   あたしは我関せずで拍手もせず、仔牛のフィレステーキを頬張っていた。気分は最悪でもお肉はトロけるほど美味い。 「どうせ男なんか浮気すんで」  拍手しながらニヤリとする小梅に「悪いヤツやなぁ」と言いつつ、自分も内心では同じことを思っていた。だから、小梅とは気が合うんやなって思う。  美味しい物を食べただけでは怒りが治まらなかった。  よく行くワインバーで数杯、居酒屋に移動して数杯、浴びるように飲んだ。  その辺で記憶が飛んでしまった――。 「あのう……あのう!! さっきから目覚まし鳴ってますけど」 「んん……。え……? 誰!?」  聞き慣れない声で目を覚ますと、目の前に知らない男がいた。  おまけに――。 「あ、あんた何それ。あたしのベルトなんか首に巻いて一体どういうつもり!?」  知らない男はパンイチで正座し、首にあたしのチェーンベルトを巻いていた。状況から察するにワンナイト的な関係だったんだろうけど、まったく記憶にない。
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