5.湖の休日 ※

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 ドアの鍵を閉めた途端、アキはぼくの後頭部を掴んでキスをした。  体が軋むかと思うほど強く抱きしめられて、その場に倒れそうになる。 「アキ、アキ!玄関はまずいから!!」 「⋯⋯じゃあ、玄関じゃなかったら、いい?」  思わず息を呑めば、いきなり体が離された。  アキの目が縋りつくような色を帯びる。  アキは靴を揃える時間も惜しいと言いたげに、ぼくの手を引く。  よろけるようにして、二人で狭い階段を上った。  一日中誰もいなかった家は、しんとして空気も冷たい。  ぼくの部屋の中は、窓のカーテンから漏れる外の明かりしかなかった。  いつも電気はベッドの枕元で切り替えるようにしている。 「ちょっと待って。電気とエアコンつけるから」  そう言ってスイッチを入れようとした手を掴まれて、ベッドに押し倒された。  アキは一言も口をきかない。  掴んだぼくの手にキスをして、服の胸元に手をかける。 「アキ⋯⋯まっ⋯て。さむい。寒いったら!」  胸をぐいぐい押しても、全然動かない。力のないぼくが勝てるわけがなかった。 「すぐ、あったかく、なるから⋯⋯」  アキの声が、かすれる。  長い指が、ぼくの服を次々に剥いでいく。  冷えた空気の中で、アキがぼくの肌に触れるたびに、どうしようもない熱が生まれる。  ぼくの下半身はとっくに熱く硬くなっていた。  下着がぐちゃぐちゃに濡れているのがわかって、唇をかむ。  アキの手が下着を脱がして、ぼく自身に触れた。 「んッ!あ、アキも⋯⋯脱いで」  アキは黙って、服を脱ぎ始める。  鍛えられたきれいな筋肉が見えた時、そこに触れたいと思った。  触れて、すがりついて。その先は。  最後の一枚を床に脱ぎ捨てると、アキがぼくの体に覆いかぶさってくる。  素肌と素肌が重なる感覚は、信じられないほど気持ちが良かった。
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