1.本に呼ばれて

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 ぱらりと本をめくる。  〈⋯⋯けて〉  〈⋯⋯たす⋯⋯けて〉 「声?」  どこからか声がする。  辺りを見回しても、早めの下校をする生徒がぽつぽついるだけだ。  ふっと、目の前に白い光が広がり、おぼろげに人の姿が浮かび上がった。  なにこれ?  ぽかんと自分の口が開いたのが分かった。  まるで映画の3Dみたいだ。本の中から、人の半身が抜け出している。  目の前に浮かび上がった影が、ぼくに向かって手を伸ばす。  そして、笑った。にやりと。 「ぎゃあぁあ!!」  こわい──!お化けや幽霊は大っ嫌いだ。  そして、3Dと違うのは、感覚があったことだ。  叫んだ瞬間に、白い影から肩を掴まれた。がっしりと。  馬鹿力に掴まれて、頭からずぶずぶと引きずり込まれていく。  目の前の、光の中へ。  ひいぃ! 「由千っ」  幼馴染みの声が聞こえた。  瞬間、ぼくの右足を大きな手がものすごい力で掴んだ。 「痛い!」 「⋯⋯っ!なんだ、これ!!」 「アキ!?」  右足を掴んでいるのはアキなのか?  確かめることも出来ないまま、白い光を放つ本の中に吸い込まれていった。  ぱちりと目を開けたら、高い天井が見えた。 「⋯⋯ここ。どこ?」  大きくてふかふかのベッドに横になっていた。  どう考えても、ここは学校の保健室ではない。  むくりと起き上がって、自分の体を見る。いつもの学生服のままだった。  辺りを見回すと、自宅の6畳の部屋を二つ合わせた位の広さの部屋にいた。ベッドと椅子と机がある。物は少ないけれど、どれも凝った細工が入っていた。 パタン。  扉が開く音がする。 「お目覚めになりましたか?」  絵に描いたようなイケメンが部屋に入ってきた。  深い藍色の瞳が、微笑むとあたたかな光を帯びる。  サラサラ流れる銀色の髪は、後ろで一つに結ばれていた。薄い甲冑。背には短めのマント。腰に帯剣が出来るのは、騎士と相場が決まっているだろう。  ⋯⋯映画の撮影か何かだろうか? 「ええっと、ここはどこですか?そして、あなたは?」 「ここはランデバルト王国。私は近衛隊長のユアンと申します」 「らんでばると」   聞いたことないけど、とりあえず言葉が通じる。イケメンは声までいい。そう思って一息ついた時。  バン!  もう一度、扉が開いた。
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