5.湖の休日 ※

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「あ、アキさ。ちょっと待って」 「ん。なんで?」  そう言いながら、アキは顔中にキスしてくる。  おでこ、まぶた、頬。そして、唇。  アキの少し厚めの唇からぼくの口の中に、熱い舌が忍び込む。  舌先から根本、歯の裏側と舐められた。  いつの間にか、唾液ごと舌を吸われて、必死で息をする。  ぼうっとして、アキの腕の中で力が入らなくなる。 「やば⋯⋯」  アキは唇を離して、小さく呟いた。 「由千が、かわいすぎて困る」 「ん。⋯⋯ぼくも、ぼくもね」  とろんとした頭のままで話し出す。  アキがかっこよくて困るんだ⋯⋯。そう呟いたら、アキはこつん、とおでこをぶつけてきた。 「お前、ほんと、凶悪なとこあるよな」  指を絡めてキスをして、ぼくはすっかり困ってしまった。  誰も見ていないと言う解放感が後押しをする。もう少しアキに触れたくなる気持ちを。 「寒いからな」 「うん、寒いから」  言わなくてもいいのにそんな言い訳をして、二人でぴったりとくっついて歩く。  ダムの周辺を歩き回り、ケーブルカーにも乗った。  コンクリートで固められたダムの上から下を見れば、目もくらむような高さに足がすくむ。  アキの腕にしがみついたら、くすりと笑われた。  いつもはしないけれど、ぎゅっと手を繋いで歩いた。  アキの手は温かくて、大きくて、ぼくたちは目が合う度に何回もキスをする。  ダムの観光放流は、すごい迫力だった。  午前と午後に1回ずつしかないから、流石にその時間は人が集まってくる。  轟音と共に、6分間に及び滝のように落ちてくる水の柱を、夢中で眺めた。  水煙は川底で舞い上がり、小さな虹を作る。  他の人達と一緒に歓声を上げた。  もっと頑張って歩けば、大吊り橋もあるし、遊覧船にも乗れる。  でも、ぼくたちは湖を見ながらカフェで食事をして時間を過ごした。
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