最悪な幕開け

2/5
165人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
1年前、俺は長期出張を言い渡された。 あまりに急で、家族と離れる覚悟もないままに。 1年か、、、 嫁とは遠距離恋愛をした事もあり、会えない時間はたくさん過ごした。 だけど1年という長い時間、嫁や子ども達と離れた事はなかったのだ。 不安な気持ちはもちろん、俺は寂しかった。 嫁には恥かしくて言えたもんじゃないが、俺はあいつが傍にいないと不安だし寂しくなる。長い間一緒にいるというのにあいつへの気持ちは昔から変わらない。 「1年かぁ、、、長いよな。オレには無理かも、、、」 つい口から出た本音だ。 だけど寂しいだなんて言えなかった。お前の口から言ってくれよ。寂しいって、、、 「1年なんて意外とあっという間じゃない?長い休みの時は帰って来たらいいし今は便利な世の中なんだからさ」 、、、そうだよな。 嫁の話は間違いではない。 だけど、違うんだ。 俺がほしかったのはそんな言葉じゃない。 「そんなもんかね」 すれ違った感情に少し寂しさを感じた。俺が言葉にしないだけなのに。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!