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花であれ野菜であれ、所属する農業組合が定めた規格に通るための努力は、農家にとって「宿命」ともいえる。
形、色、長さ、太さ、重さ、傷や枝折れの有無。細かく複雑な基準を経て、合格したものだけが流通する仕組みになっている。スーパーなど店頭に並ぶ生産物に統一性があるのは、この「規格」のおかげだ。
「大事って分がってるんだよな――でも」
「でも?」
祖父は後ろから付いてきて、一緒に畝を回っている。
「組合員は組合以外と契約したり、販売したりしちゃいけないって、じっちゃも知ってるべ? だから規格を満たせなかった花は、全部廃棄されることになる」
感情的になるとつい、手元が狂う。噴射した農薬が菊の葉を乱暴に揺らし、1枚がはらりと土に落ちた。
「こないだなんて、100本入りが200箱も棄てられた!それに、ほら――この農薬代だって馬鹿にならないわけで」
消毒用の農薬散布にかかる費用は毎週4万円。これを平気でホイホイと出せる農家は、他にも見当たらなかった。
「せめて、花全部を店頭に並べてあげられたらいいのにな――」
ため息をかき分けるように、じっちゃは一歩、ぐいと前に出た。
「樹。命を大切にすることに、限界なんてねぇべさ。おめも、わらしの頃から十分分がってるべ」
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