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「花は難しいんだや。おめにだば、無理だ」 地元の高校を卒業すると、2年間の研修を経て、実家の米農家を継いだ。反対を押しきって花卉(かき)農家に転向したものの、結果は思うように出ず。はがゆい思いが空回りした。 花づくりを始めて3年目。23歳でやっと、反対する人々の言い分を理解し始めている。 「あぁ~、諭吉さんが消えていく!」 原価から必要経費がどんどん差し引かれ、わずか30~40%しか手元に残らない。それなのに湯水のごとく消える灯油代。豪雪地帯でビニールハウスの暖房を我慢しろと言うのは、それこそ無理ってもんだ。 極めつけは、「バラ1本当たり1円徴収」という組合の謎ルール。10万本で10万円……! 生活費のため新聞配達と除雪のアルバイトを掛け持ちすれば、花にかける作業時間がなくなった。 品質は上がらず、廃棄処分の花も減らなかった。 まぁ、当然といえば当然か――。 「こいだばおかしいんでね」 何もかも嫌になって、作業小屋の真ん中で大の字になった。 「労働の『3K』って、きっとこれのことだべさ」 きつい・稼げない・(花が)可哀想――。
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