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いいんだけどさ
「で、寝不足だと」
「んふふ」
「あー、はいはいわかったからもうそのにやけ顔はぎ取ってもいい? それかそぎ落としてもいい?」
私がじゃんけんのチョキとパーを向けると、七菜子の隠しきれていないクマにシワがよった。
「もう、やめてよぉ」
「……きもい」
朝のホームルームが始まるまであと10分くらい。教室内はそれぞれのグループで談笑している。他にも一人で本を読んでいたりイヤホンをしていたりする人もいる中、私たちは机を挟んで座っていた。
窓側、後ろから二番目、七菜子の席。私が座わっている席の主はまだ来ていない。身体を横にして首だけ七菜子の方に向かせていた。
「わたしをきもくしてくれたのは七瀬ちゃんのせいなんだからね」
「微妙に意味わかんない日本語になってるよ」
「んふ、んふ、んふふ」
「ダメだこりゃ……」
高校に入学してからもう2か月が経過した。七菜子とはたまたま隣の席になり、同じ『七』がつくからという理由で話すようになった。
「で、もう一人の寝不足野郎は? 朝練?」
「んふ」
「ちゃんと言え」
ぺちんと軽く頭を叩く。嬉しそうにえへへと笑っている。最近はずっとこんな感じだ。
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