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「はぁ、それにしても七菜子がねぇ」
「いやぁ」
首の横をさすりながらあたりを見回す七菜子と私の幼馴染である優一が付き合っていることはみんな知らない。七菜子曰く噂されるのも、冷やかされるのも恥ずかしいし嫌なので秘密にしてほしいと頼まれた。
そもそも学校で話しているところを見たことがない。優一とはトークアプリでチャットするだけらしいが、それでも幸せなんだとか。
「それで、昨日は何の話したの?」
「え~、内緒」
「なんで、教えてよ」
「え~、じゃあ」
口元に手を添え、耳元にささやくように「内緒」と言われる。私はイラッとしてまたぺちんと頭を叩こうとするも、七菜子は両手でガードしようと構えていた。見事に防がれ、七菜子の手に私の手が乗った。むふふとドヤ顔をしていた七菜子だが、教室のドアに目が止まり、急に小さくなった。
朝練を終えた優一が大きなカバンを肩にかけて教室に入ってきた。優一は野球部で坊主だが顔立ちがハッキリとしている。七菜子的に直球ドストライク、見逃し三振ノックアウトらしい。七菜子は控えめに手を振り、優一はそれに応え控えめに振り返していた。
私は机にひじをつき、顔を近づけた。同じく七菜子の顔も近づいてくる。相変わらず大きな目だなって思う。童顔で身長も顔相応だ。口にしたら怒られるから黙っているけど。
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