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視えざるモノ
イラスト/ryon*様
https://estar.jp/users/149570819
公開日:2021/1/26
「さぁ、終わりにしようか」
一瞬にして静寂に支配される教室。
月光が潰された教卓と血溜まりで汚れた床を明るみにして、鉛色の日本刀を片手に男子生徒が口角を上げて誰となく言った。
ーー否。
鋭い眼光で見据えた彼の瞳には、ハッキリと倒すべき相手が見えていた。
「随分とまぁ食い散らかしやがって……。オマエ等が喰らってきた、そんじょそこらの視えない奴等と一緒にすんじゃねぇよ」
すると口に含んだジュースをぼたぼたっと落とすかのように、天井の方から赤黒い血液が滴り落ちてきて。次の瞬間、勢いよく複数の手足の跡がベタベタっと黒板汚していく。
「ったく、往生際の悪いヤツだぜ」
会話が通じない相手と分かりきってるはずなのに、構えていた刀身を一旦下ろして。溜め息混じりに愚痴を溢した男子学生は、気配から相手が後ろに回り込んで来た一瞬を狙って、振り向き様に目標を薙ぎ払った。
それも一見空振りかと、落胆してしまいそうな手応えの無さだが違う。
綺麗に斬られ過ぎて、身体が絶命に気付くのが遅れたに過ぎず。今まで彼以外視ることが出来なかった相手が、途端に血飛沫をあげて沈黙し、壊れたパソコン画像のように傷付けられた骸を露にした。
「こりゃ全滅だな」
いつ閉校しても可笑しくない、田舎のよくある少人数学校。日中自己紹介を交わし、生徒を含めた先生の数と退治した異形なモノから生えた手足の数がほぼ一致する。
それも腐りかけた手足の様子からして、間に合わなかったとか言うレベルではなく。喰った人間をまるで生きているかのように幻覚を見せ、一人ずつ狩っていった結果。たまたま今日転校してきた彼が、最後の獲物として狙われただけのようだ。
故に此処の生徒や先生と初対面だった彼の割り切りは早く。血で汚れた刀身を一度振り落としてから鞘に納めると、黙って教室から出て行った。
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『絵師がみたいシーンを絵にしたら
物書きさんがSSをつけてくれる』
ryon*さんからの決め手フレーズ
「さぁ、終わりにしようか」
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本投稿はこちら↓↓
https://estar.jp/pictures/25773841
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