桜電報

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桜電報

イラスト/ちゃぼ様 https://estar.jp/users/291978704 公開日:2021/4/3 bdcedbf2-f537-438d-9bc9-9e79ad8c5992 ーー受験合格発表当日。 徒歩で通うには遠すぎる大学から、 電報局の協力の下、我が家に朗報が届いた。 試験を受けた本人より周囲が大変喜び。 まだ陽が高いというのに酒を飲み交わし、 ()められる度に実感が沸いてくる。  ーーこうしてはいられない!ーー 浮き立つ心を抑えきれず、 約束の時間を考えると気が早いものの。 靴を履いて、玄関先から声を張り上げる。 「母さん、ちょっと出掛けてくる!」 「夕刻には帰ってくるんよ?」 けど返答は曖昧に済ませて、 すでにどんちゃん騒ぎの家を抜け出し、 仲間と約束した裏山の桜木へと足を運んだ。 ーーまだ誰もいない。 どうやら自分が一番乗りのようだ。 勢い任せに来たもんだから、 少々気恥ずかしかったので丁度いい。 しっかり呼吸を整えてから報告する。 「サクラサク」 すると裏山に駆け抜けた風が、 花吹雪を起こして華やかに祝福してくれた。  ーーあいつ等はどうだったかな?ーー 受けた大学はそれぞれ違うけど、 共に切磋琢磨してきた気の良い仲間だ。 一抹(いちまつ)の不安はあるものの、 この満開の桜を見に来てくれるはずだと、 自分に言い聞かせながら待つ。 するとチラチラと桜が舞い散る中、 風に乗って朗報が耳に入る。 「フジサンチョウセイフクス!」 言葉は違うものの、意味は同じ。 希望した大学に合格したと、道端で出会った仲間を引き連れてやって来た。 そこで俺も負けじと言い返せば、 駆け寄って来た仲間にもみくちゃにされる。 ーー倍率を考えれば狭き門。 誰かが撃沈してても可笑しくないのに、 持ち寄った電報を見せ合って、 お互い健闘を称えながら笑った。   ーーこれぞ櫻花爛漫(おうからんまん)ーー 幾つになっても忘れようのない 思い出となるだろう。 ======= 『絵師がみたいシーンを絵にしたら    物書きさんがSSをつけてくれる』 ちゃぼさんからの決め手フレーズ 「サクラサク」 ======= 本投稿はこちら↓↓ https://estar.jp/pictures/25804631
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