さぁ、御覚悟

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 車椅子から松葉杖になり、受傷から約1ヶ月半が経過した。  入院が長くなると、次第に患者同士の友情が芽生えてきて、最近では隣のじいさんから煎餅を分けてもらえるまでになった。俺はお返しに、売店で買った缶コーヒーをおすそ分けしている。  互いにどこかしらを痛めて、同じ境遇を生きている者同士だ。どこかに同情が湧くのだろう。俺もすっかり入院生活に慣れてしまって、知っている患者が退院するときなどは、本当に涙が出そうになる。  高齢のじいさんやばあさんであっても、一度は同じ釜の飯を食った仲。きついリハビリにも、本当によく耐えた。そんな想いが込み上げてくるのだ。  ある日、左足への荷重許可が下りた。今日から左足を着いて、歩いても良いらしい。座位でできる左足のトレーニングはしていたのものの、1ヶ月以上地に足を着けていないのだ。  着く瞬間は恐ろしかった。リハビリの専門職である理学療法士に見守られながら、平行棒内で恐る恐る左足を地面に着いた。
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