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両手で平行棒をしっかりと支えながら、ぐっと体重をかける。痛みはさほど感じないが、膝がグラグラして何ともおぼつかない。
理学療法士に見守られながら、平行棒を2・3度往復する。次第に歩けるようになってきた。30数年も歩いてきたのだ。身体はちゃんと覚えていた。
両手に抱えていた松葉杖の1本は取り上げられ、残りの1本を右手に抱えて平行棒を脱出。徐々に歩くのがうまくなってきたのが自分でも分かる。
歩行という能力を手にし、初めて歩いた人類はきっとこんな気持ちだったのだろう。飛び跳ねたいくらい嬉しい。とは言っても、まだまだ跳んだり跳ねたりはできないが。
片松葉杖での歩行ができるようになり、今度は杖に変わった。この年で杖をつくのはみっともないが、仕方がない。周りの人も杖をついているせいか、特別違和感は感じない。
しかし、俺の身体は叫んでいる。杖に頼らず、自分で歩けと。
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