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杖歩行に慣れてくると、少しずつ杖なしでの歩行、そして階段昇降、屋外での歩行へとリハビリは進んだ。
歩くのがこんなにしんどいものだとは思ってもいなかった。以前はそんなことを意識することなく、自由に歩けていたのだ。
俺は改めて、人間の持っている力のありがたさをしみじみと感じた。
屋外歩行は杖を持って歩くものの、ほとんどつくことはなく、念のために持っているだけになった。もう社会復帰は近い。
するとどうだ。やっと自由なシャバへ出られるのに、なんだ、この妙な寂しさは。
今まで一緒に頑張った仲間やスタッフ、新しく入ってきた後輩の患者たちの顔が浮かぶ。皆、一生懸命リハビリに、生活に取り組んでいる。どの方も素直で、苦しい中、互いを励まし、笑顔で声を掛け合ってきた。
俺は知らずのうちに、この病院という異質な空間に居心地の良さを感じてしまっていた。
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