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他の病棟には、俺なんかよりももっと重症で、今後歩くのすら難しい患者もいた。中には小さな子供まで。
それでも彼らは挫けることなく、懸命に毎日を生きていた。高齢者の中には自宅には帰れず、施設へと転院する人もいた。
自分よりも境遇の悪い人を見て、自分を振り返るのはいいとは言えないが、俺はまだ恵まれていた。
骨折して入院という不遇に見舞われたものの、こうして歩けるようになり、ほぼ受傷前の状態に戻りつつある。おそらく山登りにも、また行ける日が来るだろう。
もっと懸命に生きなければ。
そして社会の役に立ち、みんなが自然に笑えるように貢献しなくては。
春を待つ桜の木の下を、杖を片手に歩きながら、俺の心髄に今までになかった覚悟が芽生えた。
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