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ふたり言(会話劇)
「先輩...バスタオルとかTシャツとか、それにシャワーとか...色々ありがとうございました。」
「あーうん、お兄ちゃんのだったけど、サイズがあってよかったよ。バスタオルは、そこに置いといて。」
「はい...ん?」
「ん?どうかした?」
「いや、この匂い...」
「レモネードだよ~今淹れてるから、ちょっと待っててね~」
「あっ...はい、ありがとうございます。」
「はい、どうぞ~」
「ありがとうございます。いただきます。」
「うん、熱いから気を付けてね~」
「...はい」
「...それで」
「はい?」
「どうして、あんなことしたの?」
「...。」
「...もし私の家が近くじゃなかったら、それに親とかが居たら、君は今頃びしょ濡れで家に帰っていて、風邪をひいていたかもなんだよ?」
「...親が居ても、入れてくださいよ。」
「いやよ、めんどくさいし」
「それはそれでひどくないですか?」
「それに...最悪死んでいたかも...」
「いや、さすがにそれは...」
「...。」
「...すみませんでした。心配かけて。」
「嫌だ...許さない」
「えっ...」
「ちゃんと理由を言ってくれないと、許さないよ。」
「...わかりました。ちゃんと言います。」
「...うん」
「...先輩がストラップを川に投げたとき、なぜか、『それだけは違う』って、そう思ったんです。」
「...ちがうって、なにが?」
「...何なんでしょうね、それは僕にもよくわからないんですけど...ただあのときの先輩は、あんな状況だったのに、あんな風に、自分の思い出を投げ出してしまう状況だったのに、すごく綺麗に見えて、それでいて悲しそうで...こんな風に、何かが終わってしまうのが...それがなんだか、すごく嫌だったんです。」
「...えっと...」
「何言っているのか、わからないですよね」
「うん...ごめん」
「いいんです、自分でも何を言いたいのか、イマイチわかっていないので...」
「そうなの?」
「そうなんです」
「そっか...」
「...はい」
「...わからないことだらけだね...お互いに...」
「...そうですね...でも、今はまだそれで良いんだと思いますよ」
「...どうして?」
「...なんとなくです」
「フフッ...なにそれ...」
「さぁ、何なんでしょうね...」
「...。」
「...。」
「...。」
「...。」
「...ねぇ」
「はい?」
「レモネード、冷めちゃうよ?」
「...冷ましているんですよ?」
「うそだー」
「本当ですって」
「あついの苦手だったっけ?」
「いえ、全然イケます」
「じゃあウソじゃん、はやく飲んでよ」
「...いいんですか?」
「...どうぞ」
「じゃあ...」
「お~一気にいったね~」
「先輩が急かすから」
「君が飲むのが遅いから」
「...。」
「...。」
「...あの、空さん」
「はい...?」
「...すき...です」
「...そっか...ありがとね...。」
「...はい」
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