言い訳信者のプロローグ

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言い訳信者のプロローグ

 高校生になったら、きっと何かが変わるモノだと、何故か漠然と、期待していた。  授業中になんとなく、教室から外の風景を見ながら、僕はそんなことを考えていた。  教室では数学の授業が行われていて、今は演習問題を各自解いている時間なので、こんな風に僕が物思いにふけっていても、別に授業に集中していない、成績不良者というわけではない。  むしろ僕はその逆で、高校生になってからは何の部活にも入らず、バイトもせず、友達とはそれなりの付き合いを保ちながら、毎日次の日の授業に向けて、予習を欠かさず行う日々を、過ごしていた。  だから授業中のこんな時間は、僕にとっては退屈で仕方がない。  なんせ授業自体が、僕が前日に行った勉強の復習みたいなモノなのだから、高校の授業が教科書に則って行われる以上、僕は既にその部分を片付けてしまっている。  ちなみに僕は、別に有名大学に進学したいからとか、親から勉強を強制されているからとか、はたまた学生の本文は勉強であるからとか、そんな世間的に当たり前とされている理由で、こんな日々を過ごしているわけではない。  ただ単に、今の僕には、それぐらいしかやることが思いつかない。  本当に、それだけのことだ。  他にすることがないのなら、別に大して好きでもない勉強でも、まぁやろうかなって思うのは、割と自然なことではないだろうか。  そんな風に、どうしても僕は、考えてしまう。  そして僕は、そんな風に考える癖に、「何か面白いことが起きないかな~」って考えながら、何も変わったことはすることなく、今でさえも、期待しているのだ。  なにも起きる筈がないと、自覚しながら...。    「はい、じゃあー今日はここまで。まだ問題が終らなかった人は、次の授業までには終わらせておくように。」  終業を知らせるチャイムの音が教室に鳴り響くと、それを聞いた先生が、授業を終わらせる声を上げる。  そしてその声とチャイムの音を聞いた、同じ教室の学生たちは、まるで水面から顔を出して、初めて息を吐けるような声を各々出して、そして口々に、次の昼休みの食事について話したり、部活のことを話したり、趣味のことを話たりしている。  もちろん、ただの無駄話もその中にはあるわけで、僕も大抵、昼休みは友人と共に、そんな感じで過ごしている。  そのときの話の内容に、特に興味があるわけでもないし、そんなことは決して問題ではないこともわかっていて...  ただ単に、世間一般的に見て高校生の昼休みは、1人で過ごすよりは何人かとつるみながら過ごしていた方が、マシだというだけだ。  そしてその昼休みが終わって、午後の授業をこなしたら、あっという間に家路に着く時間になって、僕は家に帰るのだ。  ちなみに僕の周りの友人は、各々で何かしらの部活に入っているみたいだから、放課後にまで付き合いが延長することはありえない。  だから僕は、必然的に何もないまま、家に帰ることになる。  こんな感じの生活が、高校に入学してから、ずっと続いている。  別に他にしたいことも、することもない僕の高校生活は、こんな風に浪費されていく。  これが僕の、山口 歩(やまぐち あゆむ)の、今のところ平凡で退屈な、高校生活という名前が付いた、3年間という期間限定の全てである。  「あれ、あんなの前はあったかな...?」  帰り道、僕はガシャポンを見つけた。
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