騎士団長とメイド

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騎士団長とメイド

「パルヌさん・・・ですか。」 「あぁそうだ。 あいつ・・・・・・裏でそんなことやってたとはなぁ。」 僕の呟きにサーチェが頭を掻きながら答えた。 その反応にも頷ける。 パルヌからはいかにも小物という空気が漂っている。 僕もこのようなことを企てる奴だとは思っていなかった。 「どうするの〜? 今から殴り込む? 私も頑張っちゃうよ〜」 サヤは虚空に向かって拳を突き出す。 やる気は十分のようだ。 「どうするかねぇ。 セリカ? なんかいい案あるか?」 少し考える素振りを見せたのち、サーチェが僕に振った。 「そうですね・・・・・・少し泳がせてみますか? 今の時点ではまだ証拠が弱いです。 それに、パルヌさんが奴隷を集めている理由も分かっていません。 それが判明した後に議会で問い詰めるのはどうでしょうか?」 僕は素直に意見を述べる。 サーチェは納得したように頷き僕を見ていた。 サヤは少し肩を落としているようにも見えたが仕方ないか〜、と呟いているし納得して貰えたようだ。 「ん。 セリカが言ってることが正しいな。」 「だね〜じゃあ私が証拠とか理由とか集めといてあげるよ〜。 かわりに私に議会の席を用意して欲しい!」 話が上手くまとまったと思ったところでサヤがまた面倒臭いことを言い出した。 そんなに議会に参加したかったのだろうか? しかし・・・・・・タイミングが悪い。 サーチェも同じようなことを感じているようで面倒くさそうな顔をしている。 しかし、少し思案した後・・・・・・ ―――いいのを集められたらな。 そう許可を出した。 投げやりにも見えるがサヤが珍しくやる気になっているしいいものが見つかればプラスになると判断したのだろう。 「んじゃそういうことで頼む。 分かってると思うけど、その犯罪組織の刺客とかには気をつけろよ。」 サーチェはそう言い残して部屋を後にするのであった。 ―――――――――――――――――――― 「一本です。」 そう言って首元にナイフを突きつける。 「まいりました・・・・・・」 ナイフを突きつけられている対象、メイルは小さく呟いた。 その声を聞くと同時にナイフを収める。 「素晴らしいです。 セリカ殿。」 メイルは僕を賞賛した。 その表情から悔しさが伺える。 本心からの賞賛では無いのかもしれない。 それが分かっていても褒められると悪い気がしない。 倒れた日以来、僕は『読心』をかなり使いこなせるようになった。 まだ魔力の消費量は多いが・・・・・・慣れていけばもっと減らして行けるだろう。 おかげさまで二本に一本は取れるようになってきた。 次の目標は三本に二本だな。 「その・・・・・・セリカ殿。 一つお願いが。」 脳内妄想に浸っているとモジモジとした様子でメイルが切り出した。 「何でも仰ってください。 私にできることなら何でもやりますよ?」 僕としてはメイルにはお世話になっているので基本的に何でもするつもりだ。 発言を促すと彼女はキッと真面目な顔になり・・・・・・ 「私は本気でセリカ殿と戦いたいのです。」 そう大きく叫んだ。 戦いたい、か。 うーん。 メイル程の実力者になるとどうしても自分の全力を晒さなければならないからやりたくないんだが・・・・・・ 「いいでしょう。 やりましょうか。」 僕は戦いに了承した。 デメリット以上にこの戦いにはメリットがあると判断したからである。 「ありがとうございます。 それではまた明日ここで。」 メイルはそう言い残して去っていった。 どうやら今日戦うわけではないようだ。 「さて・・・・・・帰るか。」 僕は服についた泥を払い部屋で休もうと歩き出した。 ―――――――――――――――――――― 「今戻っ・・・・・・う!」 僕は部屋のドアを開けた途端に漂う不快な香りに思わず鼻をつまんだ。 (一体なんなんだ・・・・・・) 僕はその原因を確認するべく鼻をつまんだまま部屋の中へと歩き出した。 「お〜おかえり〜ヴァイスくん。 ・・・・・・って何鼻つまんでるの!?」 「・・・・・・おいサヤ。 なんなんだこれは?」 僕は自分の目を疑った。 朝、部屋を出るまでは綺麗な白色で染まっていた部屋の壁やカーテンが桃色や黄色などで跡形もなく改装されていたのであった。 「ん? いや〜こないだの尋問手伝ったお礼をサーチェくんに貰ったから模様替えでもしようかな〜って思ってね。」 どうかな? そんなことを言いたげな目でサヤは僕を見つめる。 「ふざけるなよ?」 「え〜そんなに怒んないでもいいじゃ・・・・・・ちょっ! 痛い! 痛い痛い痛い痛い痛い! 本当に痛いから、ちょっ・・・・・・落ち着いて!」 僕は背伸びしてサヤの頬をつねった。 「何が落ち着いて、だ。 勝手に住み着いている分際で部屋を勝手に変えるんじゃない。」 「分かったよ〜。 悪かったから許して! 」 サヤは涙目で僕に謝った。 彼女なりに反省しているようだし許してやるか・・・・・・ 僕も怒るのに疲れたしな。 「そうだ。 この変な香りもサヤの仕業か?」 怒りが収まったことで再び不快な香りのことを思い出した。 彼女は首を傾げて思案した後・・・・・・ 「あ〜。 香水の事ね〜。 今王都で流行ってるいい匂いのする水なんだ〜。」 「そうか。 部屋のことは許してやるからそれだけは早く捨てろ。 僕が嫌いな香りだ。」 「え〜。 まぁヴァイスくんはいっつもいい匂いだもんね。 後で捨てとくよ〜。 クンカクンカ」 サヤが僕に鼻を近づけ鼻を忙しなく動かす。 「あれ? 今日ちょっと汗臭いね。 風呂入ってきたら?」 そしてデリカシーのないことに僕に風呂を促したのであった。 「いろいろ言いたいことはあるが・・・・・・分かった。」 疲れを癒す意味もこめ、僕は風呂へと向かった。 「やってくれたな・・・・・・」 そして、不快な香りの正体が風呂に浮かべられた大量の花だと気づくのであった。 「仕方ないか・・・・・・」 そう呟いて風呂に入り、明日の決戦に向けて万全の体制を整えるのであった。
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