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今じゃないでしょ
藤堂 奈々(トウドウ ナナ)、、、いや永瀬 奈々(ナガセ ナナ)は最悪のタイミングで意識が蘇った。
「元気な男の子ですよー」と嬉しそうに言う産婆の顔を見ながら私ははどうしてこうなってしまったのかまだ出産後のぼんやりとした頭で考えた。
永瀬 奈々はごく普通の空手に励んでいる16歳の女子高生だったはずだ。
たしか今まで目標にし続けていた空手大会で優勝して、その帰り道に道路でしゃがみこんでいた男の子をかばって、、、
「車にはねられたんだ!」思わず叫んでしまった私は悪くないと思う。誰だって自分が死んだはずなのに気が付いたら叫ばずにはいられないに違いない。
でも産婆からは変な目を向けられた。結局出産で疲れすぎたためだと判断されたが。
「くるま?奈々ちゃんは疲れているのよ。名前を考えるのは明日でいいから寝なさい。坂本さんには私が言っておくから。」
彼女の提案に従って目を閉じたものの寝れるわけなどない。 じくじく痛む下半身を無視して必死に今の状況について考えた。
まずなぜ車にはねられたのに生きているのか
そしてなぜ出産をしているのか
最初の疑問はまだいい。運良く助かったかもしれない。
でも二つ目の疑問はどうしても分からなかった。そもそも彼女は妊娠するようなことをしていないしする相手もいなかった。
それに坂本なんていう知り合いは私にはいない
それに、、
何故この部屋はこんなにも古いのだろう?先進国とは思えない電気もなく、ドアもない部屋。明らかにおかしい。
周りには私の知る紙とは明らかに質の違う紙切れのようなものが散らばっている。 それに出産で麻酔を打たないなんて変だ。
唯一寝転がっていても手の届く範囲にあった紙の束ようなものを手に取り私は絶句した。
「昔の文字、、、なのに何で私が読めるの?」
紙には歴史の教科書で見るようなミミズのような文字の羅列が並んでいた。
そして驚くべきことに私はそれを読めた。
少しでもこの場所の違和感を探ろうと恐る恐る表紙らしきものをめくるとどうやらそれは日記だった
他人の物を盗み見る罪悪感を感じながらも仕方がないと思いなおして私は日記を読み進めていった。
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