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伊勢津藩の第11代藩主であり藤堂氏第19代藩主であった俺の父、藤堂高猷には子が沢山あり俺が生まれたことで側室に迎えられるのではと期待した商家の娘の母に見向きもしなかった。
拒絶された母は彼に自分の息子を認知させ、自らは側室となるためにあらゆる努力をした。
一人前の武士とするために北一刀流の道場玄武館に通わせ、また、さまざまな教養を教えた。
父がそんな母を初めて認知したのは藤堂家と永瀬家の縁談が持ち上がった時だった。
商家の娘として様々な方面に繋がりを持っていた母は、今を時めく有力な商家である永瀬家に嫁いだ永瀬ひよりと大親友だった。永瀬家との繋がりを求める数ある武家の一つであった藤堂家を背負う父はそんな母を利用することにした。
永瀬家の一人娘、永瀬奈々と彼の息子の婚姻を成立させれば側室するというものだった。
父を深く愛していた母は利用されていることを気にも留めず、永瀬家に頼み込みに行った。
結果、父の永瀬家の娘と自分の息子の婚姻を結ぶという願いは叶った。ただし、婚姻を結んだのは彼の想定していた本家の息子ではなかった。
永瀬家が母の息子である藤堂平助ならば娘を差し上げると言ったからである。
父は藤堂家と一応は繋がるからと渋々認め、婚姻を結んだ。
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