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俺は永瀬奈々と婚姻を結びたくも無かったし、父に認知されることなどどうでも良かった。
こんなにも利用されてもまだ父のことを愛している母を哀れんだりもした。
けれど、俺に抗う術はなかった。
***
結婚生活はめんどくさかった。
父からも母からも彼女とは上手くやりなさいと言われていたけれど、どうしても彼女のことを好きになれなかった。
恵まれた家庭環境で何不自由なく過ごしてきた彼女はいつもニコニコしていてうざかったし、恵まれない子であった自分との差を見せつけられているようで辛かった。
その頃は幼いころ、母と自分に見向きもしなかった父への憎しみを上手く消化することも出来ていなかったので余計に。
最悪だったのはどうやら彼女が自分の見目を気に入っているらしいことだった。結婚した当日から穴が開くほど見つめられてことあるごとに絡んできた。
どこに行くにも彼女に見張られているようで気分が悪かった。
だから、彼女が行方不明になったときも正直気にしていなかったし、むしろ喜ばしいことのように感じた。
壬生浪士組として京都に上京してから今の今まですっかり忘れていた。
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