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  真鈴の小さな泣き声が聞こえる。   倫が、真鈴の部屋の前で立ち止まり、聞   き耳を立てる。 ㉘(倫の回想)同・真鈴の部屋(夜)   ベッドで眠る真鈴。   倫がドアから様子をうかがい入ってくる。   真鈴の顔、泣き腫らし、赤くなっている。   枕元に理科の教科書。   倫、ゆっくりと教科書を開く。   開いたページが涙でふやけている。ペー   ジには、『BTB試験紙は雨で黄色に変   色する』の記載。            (倫の回想、終わり) ㉙もとのリビング(夕)   酸川、歩と向き合い座る倫。   テーブルに、テストペーパー。 倫 「私が騙したことに、真鈴は気付いたの  でしょう」 歩 「リトマス紙を使うようになったのは」 倫 「きっと私のせいです」 歩 「じゃあ、真鈴さんは、誰も信用できず  に、今も苦しんでいるってことですか?」 倫 「それは……ごめんなさい」   歩、何かを言おうとする。が、酸川が遮   る。 酸川「ご事情は分かりました。今日はこれで  失礼します」   下を向く歩。 ㉚道路(夕)   傘を差し歩く歩と酸川。足取りは重い。 歩 「私、何も気付いてませんでした」 酸川「生徒一人一人に家庭の事情はあるもの  です」   立ち止まる酸川。歩も一緒に止まる。 酸川「今日、香里谷先生をお連れしたのは、  お願いがあったからです」 歩 「お願い……?」
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