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酸川「先生に、桐戸さんの相談相手になって  あげてほしいのです」 歩 「……」 酸川「先生が来る以前に、桐戸さんは他の生  徒達にも同じ悪戯をしていました。リトマ  ス紙を使って。そして生徒達は次第に、桐  戸さんから距離を置くようになっていた」   歩が静かに聞いている。 酸川「そんな時に先生がやってきて、桐戸さ  んに初めて反撃したんです。先生の接し方  に、彼女はとても驚いていた」 歩 「……」 酸川「桐戸さんは、先生の前では、私や他の  生徒とは違う表情をします。だから先生に  なら心を開くかもしれない。どうか、担任  からのお願いです」   歩、真剣な表情で酸川を見つめる。 歩 「私にできるか、自信はありません。少  し考えさせてください」   酸川が、静かに頷く。 ㉛カフェ クワイエット・外(夜)   焦げ茶色の柱にガラス張りの珈琲店。   入口に看板。その文字『CAFÉ QUIET』   が光っている。 ㉜同・店内(夜)   テーブル席に向き合い座る歩と渓。   テーブルにはコーヒーが置かれ、歩の側   には、ノートと教科書、リトマス紙が置   かれている。   歩は、ノートにメモを書き続けている。 渓 「私は、お酒が飲みたいんですけど!」   歩、ノートに目を落としながら、 歩 「ごめん。また今度にして」   渓が少し微笑む。 渓 「歩、ちょっと変わったね」   顔を上げる歩。 渓 「何というか、先生の顔つきになった」   照れ笑いする歩。
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