リトマス試験師のなみだ

本文

　　と、リトマス紙（青）が赤色に変化する。
　　Ｔ・『味噌汁　酸性』
真鈴「変わりましたね。じゃあ交換で」
　　真鈴、牛乳パックを置き、（歩の）デザ
　　ートを手に取る。
　　席に戻り、おいしそうにデザートを頬張
　　る真鈴。
　　増えた牛乳パックを見つめる歩。

⑤同・廊下
　　生徒達が雑巾を手に床掃除している。
　　その中で、ジャージ姿の歩がしゃがんで
　　床を拭いている。
　　床にクレンザーの容器。
真鈴の声「先生」
　　顔を上げる歩。バケツを手にした真鈴が
　　立っている。
真鈴「バケツの水、捨ててきてもらえません
　か？　私、ゴミ捨てがあるので」
歩　「ゴミ捨ては、後から行けばいいんじゃ」
真鈴「じゃあ、こうしません？」
　　真鈴がポケットからリトマス紙（青・赤）
　　を取り出す。
真鈴「リトマス紙で、床掃除の洗剤が青にな
　ったら先生もゴミ捨てに賛成」
歩　「そういう話じゃ」
　　真鈴が床に手を伸ばし、床の洗剤にリト
　　マス紙（赤）を付ける。
　　とリトマス紙（赤）が青色に変化する。
　　Ｔ・『クレンザー　アルカリ性』
真鈴「青ですね。それじゃ、お願いします」
　　と去って行く真鈴。
　　歩、立ち上がり真鈴の後ろ姿を見つめる。
歩　「ひょっとして私、からかわれてる？」
菜取の声「おい、実習生」
　　振り返る歩。菜取将太（11）と白根撫子
　　（11）が立っている。
歩　「君は、菜取くん？　それに白根さん？」
菜取「桐戸に騙されたな」
歩　「どういう意味？」