リトマス試験師のなみだ

本文

　　紙（赤・青）を左手に持っている。
真鈴「先生、床掃除の洗剤が青になったら…
　…」
　　歩がポケットから台所用洗剤を取り出す。
歩　「あら？　こんなところに台所用洗剤が」
　　歩が台所用洗剤をリトマス紙（青）に付
　　ける。
　　と、赤色に変化する。
　　Ｔ・『台所用洗剤　酸性』
歩　「赤色。ゴミ捨てよろしく！」
　　真鈴、ゴミ袋を抱え、悔しそうに去って
　　行く。真鈴の背後、笑顔で手を振る歩。

⑪居酒屋　群衆酒場・店内（夜）
　　テーブル席に向き合い座る歩と渓。ビー
　　ルや酒のつまみと一緒にリトマス紙（赤
　　・青）とノートが置かれている。
　　渓が、不思議そうにリトマス紙を見つめ
　　る。
渓　「学校から盗んできたの？」
歩　「違う。帰りに東州ハントで買ったの！」
　　歩がマドラーをビールに浸し、リトマス
　　紙（青）に付ける。と、赤色に変化する。
　　Ｔ・『ビール　酸性』
歩　「やっぱり、ビールは酸性ね」
渓　「ミイラ取りが、ミイラになったな」
歩　「口内環境で、唾液は酸性・アルカリ性、
　どちらにもなるんだって。渓のはどっち？」
　　歩がリトマス紙（青）を手に持ち、渓の
　　口に近付ける。
渓　「やめろよ！」
　　笑いだす歩。一緒に笑う渓。
渓　「ところでそのノートは？」
歩　「そろそろ指導案を作って、先生に見て
　もらわないと」
渓　「今日はとりあえず飲もう」
　　歩と渓、グラスをカチンと合わせる。

⑫紫陽小学校・正門