第十話 わたしたちのしあわせ

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 ある程度の荷解きが終わった頃には夕方になっていた。  引っ越しの手伝いでそこそこ疲れていた美夜はソファの上でくつろぎながらこの後の展開を考えた。  今日は泊まる気で来たが、まったくもってにならない。  辰美は美夜の隣に座って一緒に映画を眺めている。すっかりまったりくつろぎムードだが、なんだかそれが不服だ。  ────なんにもしてこない。  決して欲求不満だとか、そういうことではない。ただ、自分の感覚ではもっと、スキンシップがあるものだと思っていた。過去付き合った彼氏はそうだった。  だが、よく考えてみれば辰美は歳上。それもかなりの。もしかして、がないのだろうか。 「あの……」  ふと横を向く。「ん?」と辰美が反応した。  こんなに顔が近いのに、辰美は無反応だ。いつもと変わらない。紳士的で優しいままだ。  ────はっ、もしかして、女の人に慣れてるの?   案外、辰美は遊び人なのだろうか。辰美は格好いいし、モテるはずだ。結婚していたかもしれないが、それ以前はモテていたにに違いない。いろんな女性と付き合ったかもしれない。  頭の中には『不二子ちゃん』のような女性が浮かぶ。スーツを着る辰美の横に並べたらぴったりだ。自分など勝てっこない。 「……なんでも、ないです」  美夜はなんだか腹立たしくて顔を逸らした。  ちょっと、期待していたかもしれない。この間ようやく手を繋いだばかりで、キスもまだ。それを辰美の優しさだと思っていたが、ここまで手を出さないと別の想像をしてしまう。
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