第十一話 嵐の予感

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 始業前、辰美は出社すると有野に声をかけた。  有野はパソコンの電源をつけて起動するのを待っていた。 「有野くん、ちょっといいか?」 「はい、なんでしょう?」  有野は笑顔で答えた。辰美はMIYAのライブの情報が映ったホームページの画面をスマホに出し、有野に差し出した。 「前に、ピアノが聴きたいって言ってただろう? もしよかったら一緒にどうだい?」 「えっいいんですか!?」 「もちろん。この人は俺がよく聞きに行くアーティストさんなんだけど、本当に上手なんだ。君にも是非聞いてほしい」 「うわあ、嬉しいです! へえ、女性のピアニストさんなんですね!」 「月末の土曜にライブがあるんだ。用事がなかったら……」 「ないです! 何にもありません!」 「そうか。それならよかった。ならチケットは俺が予約しておくよ。情報はメールで送っておくから、見ておいてくれ」 「すごく楽しみです。誘ってくださってありがとうございます」  有野は本当に嬉しそうだ。よっぽど行きたかったのだろう。  有野は美夜より少し年上だ。女性のファンは少ないから、来たらきっと喜ぶはずだ。
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