王道展開はいつも突然に

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 口の中の違和感を消すため水道でうがいをして(ついでに隣で念入りに手を洗う前原を殴って)から向かった食堂前にて。俺はポケットを探ってあることに気が付いた。 「あ、耳栓忘れた」  説明しよう!ここは王道転校生が居ない事を除けば王道設定盛りだくさんな全寮制男子校!前原みたいな顔のいい生徒は食堂を訪れるだけできゃあきゃあ言われてしまうのだ!俺のファンも何人かいるらしいけどそんなのはおまけみたいなものです。  そういう訳で耳栓は大事な耳を大音量の歓声から守る必須アイテムなのである。前原みたいにイヤホンを使う人もいますよ。 「ドンマイ開けるぞ」 「待て待て待てお前さっき俺に何しでかしたか忘れたの?気遣えよ俺を!だからそのイヤホン貸して」 「無理」 「前原〜!!!」  酷い奴だ⋯⋯。食堂にお前が入った時の熱狂具合はお前が1番分かってる筈なのに⋯⋯!お前の方が騒がれるんだからお前の耳が受け止めるべきだろ!お前のせいで俺の鼓膜が破れたらどうするんだ!  ガチャ 「「「キャアアアアアア!!!」」」 「うっ、耳がぁ⋯⋯!開ける時開けるって言えよ!」 「⋯⋯(聞こえてない)」  前原のイヤホンを奪い取ろうと腕を伸ばしていたせいで耳を塞げなかった俺は鼓膜に大ダメージを受けた。ぴえん。 「前原様あああああああ!!!!」 「抱いて!!」 「クール王子〜!俺をその冷たい瞳で見つめて〜!」 「踏んで下さい快斗様〜!」 「僕のハート盗んでぇ!あ、もう盗まれてた!」  毎日思うけど前原のファンは変な人が多いね。 「羽月様〜!マスク取って〜!」 「羽月様こっち見てぇ!」 「羽月ー!抱かせろー!!」 「いや羽月を抱くのは俺だ!」 「俺に決まってんだろ!」 「何言ってんだ風紀委員長様に決まってるじゃないか!」 「「それもそうか⋯⋯」」  ⋯⋯物好きな俺のファン(?)も大概変だな。  ていうか何か好き勝手言った挙句勝手に落ち込んでる奴等居るけど事実無根だからな!?お前らにも委員長にも抱かれるつもりはないからな! 「前原様と羽月様だ!」 「どうしよう僕今髪型変じゃない?化粧崩れてない?」 「僕こそネクタイ曲がってない?可愛い?」 「お前はいつも可愛いからもっと自信持ちなよ」 「えっ⋯⋯そんな風に思ってくれてたんだ」 「ち、違っ変な意味じゃなくて!」  どうしよう俺らをダシにしてチワワ×チワワのCPが成立しようとしている!可愛い!もっとやれ!ヒューヒュー! 「羽月、ここ空いてる」 「おっ窓際じゃんやったー」  無自覚両片想いチワワを見てすっかりご機嫌になった俺に怪訝な顔をする前原。生BLに勝てるものは無いのです。
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