王道展開はいつも突然に

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 窓際のテーブルに向かい合って座る。置いてあるタブレットを前原が手に取り、そのまま注文のために画面を操作し始めた。 「お前どうせまたオムライスだろ?」 「もち。人目を気にせず食べられるのもあとひと月位かもしれないし」 「はぁ?何だそれ」  大好きなオムライス。黄色くてふわふわでとろとろなオムライス。王道転校生の象徴オムライス。  王道転校生が今年来てくれた場合、迂闊(うかつ)には注文出来なくなる。巻き込まれ腐男子に一定の需要があることは知っているんですよこちらは。何年腐男子やってると思ってんすか。  関わりを持つかなんて分かんないけど気をつけておくに越したことはないよね。  お前たまに意味不明なこと言うよな、何だよ人目って、と何も知らずにいる前原はラーメンを頼むみたいだ。安心しな、お前も十中八九転校生に堕ちる側だよ。  ちなみに俺が極度の甘党なのに対して前原はドが付く辛党である。今頼んだラーメンだってメニュー名に辛だか辣だかが入ってて超辛そう。  見た目はクールなのに中身はホットなギャップ王子ってか?とその昔揶揄(からか)ったら、じゃあお前は見た目も中身も甘ったれた馬鹿だな、と返ってきました。中身もクール⋯⋯というか通り越してコールドだったね。まえはらちゅめたい。  オムライスとラーメン到着。ウェイターさんにお礼を言って(こればっかりは礼儀なのでフラグとか考えない)マスクを外す。まあ流石に生徒会でも来ない限り食事中に萌えは来ないだろう⋯⋯。手を合わせ、ぱくりと一口。 「ふおぉ⋯⋯!人のお金で食べるオムライスは心なしかいつもよりさらに美味しく感じる⋯⋯!」 「そーかよ良かったな」 「はむ、ひあわへ⋯⋯♡」  ほんとにいつ食べてもここのオムライスは最高だな〜!思わずほっぺに手をあてて落ちてないか確認。どうしてこんなに美味しいんだろ。やっぱりシェフの腕が良いんだろうな。ありがたや。 「ふっ、相変わらずのアホ面だな」    あ、今俺の後ろのテーブルから何やら物音が。振り返るとチワワが3匹倒れてる。人がたくさん居るところで前原が笑うのレアだからなー。笑ったというより嘲笑(わら)ったの方が正しい気が致しますけれども。  反論しようとしたところで突然入り口の方から大歓声が響き渡った。前原の笑顔は秒で消えた。眉間の皺がえぐい。「渋面もステキ⋯⋯!」とよく分からないコメントが聞こえたけどそれよりも入り口の喧騒の方が気になる。あれ、これもしかして俺1ページと経たずにフラグ回収しちゃった?(メタ)
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