寝覚めはいつも突然に

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 〜♪〜♪〜♪⋯⋯pi 「ふぁい『今どこに居る』⋯⋯?」  ⋯⋯眠い。とてつもなく眠い。着信音に反射的に応えちゃったけど、画面を見るために目を開けるのすらしんどい。誰からかな?でも今の声はなんか聞いたことある気がするような⋯⋯。 「⋯⋯」 『おい聞いてんのか』 「んぅ、いいんちょ⋯⋯?おはよーござ⋯⋯ふぁ⋯⋯ん、なんかあったんれすか」 『ハァ⋯⋯お前、今日が何日で今が何時か、今すぐ確認しろ。寝惚けてぽやぽやしてる暇なんて無ェぞ』 「ん〜?きょう⋯⋯?しがつ、ここのか、げつよーび、はちじごじゅ⋯⋯4月9日月曜日8時50分!?!?!?」 『今51分になったな、で?目ェ覚めたかよ』 「それはもうばっちりと!!すみません今すぐ向かいます失礼します!!!」  勢いよく画面をタップして通話を切り、洗面所に駆け込むと、目の前の鏡に映った自分の何の変哲もない黒い髪には⋯⋯これまでに見たことも無いような奇抜な寝癖が付いていた。 「シャワー浴びる⋯⋯?いや時間無いしこのままで⋯⋯いやでもこの寝癖は流石に⋯⋯猫耳にしか見えないんだが⋯⋯」  元々ふわふわと癖の付いたような髪質ではあるが、こんな跳ね方は初めてかもしれない。本来の両耳の上からぴょこんと生えた、2つの耳。よく獣人キャラに耳が4つ生えてて話題になったりするが、まさにそんな感じ。どうしたものか。  ⋯⋯3秒迷って諦めた。今は委員長の元へ急ぐのが最優先事項だ。寝巻きを脱いで床に放り、ワイシャツを引っ掛け、留めるボタンは最低限。スラックスに足を通し、ベルトもそこそこにネクタイとブレザー、部屋のカードキーを引っ掴んで飛び出した。  そんなゆるゆるがばがばの格好で不審者扱いされないのかって?まぁ、もしこの学校に女子が居たら、即座に通報されていたことだろう。しかしここは男子校。今日は入学式だから一般生徒はまだ春休み中だし、この時間ならまだ毛布の中でおやすみ中と踏んだ。神経質な男子生徒に説教される心配も無いって訳。  目下の問題は⋯⋯、俺が風紀副委員長であるって事と、風紀から新入生への挨拶(を兼ねた校内で問題を起こさせないための牽制(おどし))をプログラムに組んでいる入学式が、今日、4月9日の9時に始まるってこと。てかもう多分始まってる。  寮の廊下を駆け抜け、エレベーターより階段降りた方が速い!ということも無いので普通にエレベーターに乗り込みロビーへ。丁度寮長室からコーヒー片手に出てきた寮長先輩とぶつかりそうになったのをぎりぎり(かわ)しながら出口へとまっしぐら。何やら話しかけてきていた寮長先輩には後で謝っとこう。  申し遅れました、俺は鷹藤(たかふじ)学園高等部2年生、風紀副委員長の羽月(はづき)(しゅう)。ちなみに腐男子です。
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