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そのまま舞台袖へと滑り込んだ俺を待っていたのは、閻魔様でも魔王様でも、ましてや腕を4本持つ某呪いの王でもない────仁王立ちした委員長でした⋯⋯。
「遅い。どこで道草食ってた。それにその格好は何だ」
「か、返す言葉もございません⋯⋯」
この世界が漫画だったらゴゴゴ⋯⋯って効果音が描いてあると確信できる。めちゃ怖い。いや大事な式典の開始に間に合わなかった俺が100%悪いです。申し訳ございません。もうちょっとスペースがあれば、つまり俺が扉と委員長の間に挟まれていなければ。もっと具体的に言ってしまうと委員長に壁ドンならぬ扉ドンさえされていなければ⋯⋯!すぐにでも土下座させていただいたんですけれども!!!
そんな物理的に追い詰められた体に反して、俺の脳はつい現実逃避を始めてしまう。だって今のセリフ聞いた?「その格好は何だ」ですってよ奥様!そんなの、そんなのっ、普段はツン×∞で仕方なく抱かれてやってますけど?みたいな高飛車受けがある夜攻めのベッドの上でワイシャツ1枚に辛うじてパンツは履いてますみたいないかにもな据え膳コーデで攻めを待ってたのを見つけた瞬間の攻めの反応じゃないか!(ここまで一息)
以下、風紀委員長×生徒会長による再現をお届けします(俺の推しカプ)。
『来てたのか。⋯⋯何だ、その格好は』
『遅くまでおつかれさん、風紀委員長サマ。だいぶデケェ事件があったんだって?オマエが相当不機嫌になってるって生徒会にまで噂が流れてきたぜ?だからたまには俺様直々にご機嫌取りでもしてやろうかと思ってよ』
『へェ⋯⋯俺が機嫌悪ィって知っててそんなカッコで誘ってんのかよ、命知らずな奴だな。どうなっても知らねェぞ』
『俺様を馬鹿にしてんのか?オマエの本気なんかでぶっ壊れるほどヤワな人間じゃねぇ⋯⋯来いよ』
『⋯⋯今夜は寝れると思うなよ』
『ッハ、上等⋯⋯!』
「⋯⋯なァ」
「っふぁい⋯⋯!?」
妄想の世界から戻ってきました羽月です!⋯⋯多分もうすぐ殺されます。
委員長の額には青筋。俺の顔も一瞬で真っ青。
「人前でその顔をするなと何度注意したら分かるんだお前は⋯⋯しかもその格好でなんて害でしかない」
そうでした。俺が妄想してる時の顔、どうやら人様に見せられないレベルのヤバさらしい。委員長には散々言われ続けてるけど、腐男子たる者、顔面がどんなに崩壊しようとも妄想するのは使命だと思う。元々イケメンな訳でもないしな。言い訳しようもんなら半殺しにされるが。
完全にキレてる委員長の顔が近付いて、少し横に逸れる。思わず目を瞑ると、委員長ご自慢のド低音エロエロボイスが俺の鼓膜を震わせた。
「次その顔したら、犯すぞ」
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